中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

プライム市場に入る中小型銘柄の経営トップは機関投資家との対話(エンゲージメント)の充実が必須

7月9日に上場企業各社に対して上場区分の一次評価の結果が通知されました。通知といっても書面で郵送されてくるのではなく、企業各社とも東証からの連絡窓口を決めメールアドレスを東証に登録しているので、この登録先にメールで通知がされます。

今回の一次評価ではプライム市場が不適合となった東証1部の上場企業も結構ありましたが、これらの企業は、後日、改善計画を東証に提出することでプライム市場に入ることが出来るので、結果として大きな問題はありません。なお、一次評価でプライム市場に適合するか否かの当落上にある企業は、判定後にプライム市場に適合した旨の開示をしているところも散見されますが、これは適時開示ではありません。株式時価総額が100億円前後の企業は市場に不安を与えたくないので、任意で開示をしています。

さて、プライム市場に適合した会社ですが、「これでひと安心」と思っている経営トップの方も多いと思いますが、今後注意すべき事項があります。それは機関投資家の今後の議決権行使基準の改定の方向性です。

機関投資家は投資先銘柄に対する自社の議決権行使基準を有しており、各社のホームページ上で公表しています。機関投資家は、毎年2月頃に議決家行使基準を改定します。プライム市場の企業は、資本市場と積極的に対話を行い企業価値を高めること、そのための高いコーポレートガバナンスとすることが求められています。

金融庁東証としては、本来は海外投資家の要望に応えて、プライム市場の企業数を大きく減少させたかったのですが(株式時価総額は最低でも250億円)、企業サイドの抵抗が非常に強く、不本意ながら現在の東証1部上場企業はプライム市場に残れるような仕組みとしたまでです。金融庁は、今後、機関投資家が企業に働きかけて、企業がグローバル市場に向け改善がなされることを期待しています。

ということを考えると、自ずと機関投資家のプライム市場の株主総会の議案に対する議決権行使基準も厳しくなると予想されます。取締役選任基準ではROE5%が1つの判断基準ですが、この基準が上昇することなどが想像されます。いずれにせよ来年の定時株主総会でプライム市場に適用される議決権行使基準は厳しくなるのだと想像します(市場区分の移行日は来年4月4日です)。

では、企業各社はどうすべきかということですが、機関投資家との対話(エンゲージメント)が必須になるように思います。株式時価総額が1,000億円以下の企業は、企業の規模感も小さいのですから、専務クラスとかでなく、社長・CEOなどの経営トップ自らが機関投資家と非財務情報に関するエンゲージメントを11月下旬から来年1月にかけて行い、機関投資家の議決権行使基準の改定の方向性を探るとともに、自社の事業概況やコーポレートガバナンスの取組み状況について機関投資家に説明し理解を求め、また、機関投資家からのアドバイスを仰ぐことが非常に重要になる気がいたします。