今年もあと数週間で終わり、年明けからは6月の定時株主総会の準備に入る上場企業も多いかと思います。今回から来年の定時株主総会に向けてポイントになりそうな事項について、アクティビスト(物言う株主)や機関投資家の議決権行使の観点などを中心に時々ブログで記事を書きたいと思います。
本日は第1回目ですが、取締役選任議案に関する機関投資家の議決権行使基準について取り上げたいと思います。
機関投資家が経営トップの選任議案に反対するのは、企業の業績が低迷する場合です。そして、2022年の業績の判断基準はROEとしている機関投資家が多く、ROE5%が1つの目安になります。単年度ではなく、過去数期にわたりROE5%未満が継続すると反対というわけです。ROEの絶対値で判断するタイプの機関投資家と言えます。
もう1つのタイプはROE5%基準に加えて、業種内で低位にあることを反対の判断要素にする機関投資家です。結構多いです。機関投資家の個社名はスペースの関係上、省略しますが、いくつか例としてあげると次のような内容です(なお、議決権行使基準は各機関投資家のホームページに公表されています)。
機関投資家の2023年の議決権行使基準はどうなるでしょうか?
現時点で既に改定したところも数社ありますが、多くは来年の2月以降の改定になるように思います。従い、現時点では各社とも社内検討中の段階かと思いますが、基本的には2023年もROE5%がベースになるのではと想像します。恐らく8%に上げる機関投資家はいないのではないでしょうか。
しかし、5%の数値は変えないにせよ、業種内での基準を上げる可能性はあるかも知れません。例えば「業種内下位25%」にある場合に反対という箇所の数値基準を上げる可能性は高いように考えます。
機関投資家は本心としては、ROE=最低8%が必要と考えているところかと思いますが、現時点で経営トップの反対基準を一気に8%まで引き上げると反対せざるを得ない企業があまりに多くなるため、そこまでハードルは上げないが、代わりに業種内の位置の基準を引き上げるということは十分に考えられます。上場企業各社は2022年度の自社の予想ROEが業種内でどの程度の位置にあるのか把握しておく必要があるかと思います。以上が国内機関投資家のポイントになります。海外機関投資家の議決権行使基準については、次回説明をしたいと思います。