コーポレートガバナンス、株式投資、企業価値、IRなどに関する投資家目線での実務ニュース ー 強い意志のある投資を目指して

コーポレートガバナンス、中長期での株式投資、企業分析、企業価値評価、IR等について、新聞記事を中心に投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

物言う株主(アクティビスト)の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方(第6回) ー 事前警告型買収防衛策

本日も猛暑が続きますね。このような中でも、マスクを着けて通勤・通学しているサラリーマン、学生が都内では未だに非常に多いですね。何故そこまで自らに苦行を科すのか甚だ疑問ですが(人の密集した飲み屋ではマスクを外して騒ぐが、一歩、店を出た途端にいそいそとマスク着用というのも非常に滑稽な話です)、日本人は本当に周りの人の目を気にする単一民族なのだと思う今日この頃です(真夏にマスクを着けて通勤=真冬に滝に打たれるのとイコールかと)。

さて、本日から久しぶりに物言う株主の視点からのコーポレートガバナンスの連載を開始します。前回の第5回(最後に再掲)までは政策保有株式について触れましたが、今回は、コーポレートガバナンス・コードの第1章の「株主の権利・平等性の確保」にある買収防衛策です。まずはコードの該当箇所を見ましょう。

【原則1−5.いわゆる買収防衛策】買収防衛の効果をもたらすことを企図してとられる方策は、経営陣・取締役会の保身を目的とするものであってはならない。その導入・運用については、取締役会・監査役は、株主に対する受託者責任を全うする観点から、その必要性・合理性をしっかりと検討し、適正な手続を確保するとともに、株主に十分な説明を行うべきである。

これはいわゆる事前警告型の買収防衛策を示しています。最近の事例では、有事導入型の買収防衛策も増えていますが、コーポレートガバナンス・コードが制定された当時は、有事導入型の買収防衛策を導入する企業はほぼゼロですので、これは事前警告型を示していると言えます。

ブログでも買収防衛策はかなりの数の記事を書いていますが(私自身も、証券会社時代から現在の事業会社勤務までの期間で通算約10年、買収防衛策の導入実務を担当)、あらためて基本的なところからまずは説明したいと思います。

買収防衛策とは、株式の大量買付者(通常20%以上)が出現した際に買付者以外に新株を発行して、大量買付者の議決権比率を希釈化するというスキームです。事前警告型というのは、このルールを大量買付者が出現していない時点(これを「平時」といいます)からルールとして導入している場合です。つまり、大量買付者が出現するかどうか全く分からないが、ひとまず導入しておくというものです。この事前警告型が機関投資家からの評判が非常に悪いです。

買収防衛策があることは、買収者の買収意欲をそぐことになります。このため、買収者が出現することで、機関投資家保有株を高い価格で買収者に売却できる機会があるところ、それを喪失することになることが非難される点です。つまり、投資家からすれば、買収防衛策は、機関投資家が金を儲ける機会を喪失させる経営陣の保身のための方策であるということになるわけです。

事前警告型を導入するには、必要性・合理性を検討せよということをコードでは言っているわけですが、プレスリリースで色々と説明しても機関投資家の賛同を得るのは厳しいと言えます。

買収防衛策を導入する企業は、株主に十分な情報を提供し、検討の機会を確保するために導入すると言います。導入企業が100社あれば、100社ともこの理由を使います。けど、機関投資家は企業から情報など提供してくれなくとも、自分たちで判断できるというわけです。投資先企業の理論株価を算定しており、TOB価格が理論株価よりだいぶ高ければ売却するし、理論株価の方が高ければ、TOBには応じないという判断を自分たちで出来るというわけです。その通りかと思います。だから、事前警告型など導入してくれるなというわけです。

ということで、買収防衛策の廃止を提案する株主提案がなされた場合には、今の世の中では、この株主提案に賛同する機関投資家が圧倒的に多いかと思います。特に、ROEや業績が低迷する企業が事前警告型を導入するとなると機関投資家の風当たりはとても強いところです。