中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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東洋建設の買収防衛策について議決権行使助言会社のISSが反対推奨

東洋建設の買収防衛策に対して、議決権行使助言会社のISSが反対推奨したようですね。東洋建設が次のとおりプレスリリースを公表しました。

https://www.toyo-const.co.jp/wp/wp-content/uploads/2022/06/20220609_1.pdf

ISSの反対推奨理由については次の記載があります’(プレスリリースからの一部抜粋です)

ISS 社は、ISS レポートにおいて、①本議案が、ISS 社がいわゆる一般的なポイズン・ピルの議案に賛成推奨するために必要と考えている複数の要件のうち、(他の要件は満たすとするものの)特定の 1要件(具体的には、招集通知が、株主総会の開催日の 44週間前に開示されていること)を満たしていないとした上で、その場合でも、本件が YFOらによる大規模買付行為等を対象としたものであること(いわゆる特定標的型であること)から、本議案を賛成推奨するに足りる特段の事情があれば賛成推奨することもあり得るものの、②公開買付けにより発行済株式の全てを取得しようとする特定の買主が出現した場合に、当該買主に対抗して、より有利な公開買付価格で応募する潜在的な機会を株主から奪うこととなるポイズン・ピルを導入することは適切ではないと考えられることを理由として、結論的に、本議案につき反対推奨をしております。 

一般的な事前警告型の買収防衛策に対しては、議決権行使助言会社の賛成推奨を得るのはかなり難しいです。ISSの2022年版の事前警告型の買収防衛策に対する議決権行使ポリシーでは、第1段階の形式審査では、次の条件を全て満たすことが必要とされています。

  • 総会後の取締役会に占める出席率に問題のない独立社外取締役が2名以上かつ3分の1以上である
  • 取締役の任期が1年である
  • 特別委員会の委員全員が出席率に問題のないISSの独立性基準を満たす社外取締役もしくは社外監査役である
  • 買収防衛策の発動水準が20%以上である
  • 有効期限が3年以内である
  • 総継続期間が3年以内である
  • 他に防衛策として機能しうるものがない
  • 株主が買収防衛策の詳細を検討した上で、経営陣に質問する時間を与えるために招集通知が総会の4週間前までに証券取引所のウェブサイトに掲載されている

この形式基準を充たした後に個別審査になり、個別審査では「 買収されやすい状況の改善を目的とする具体的な株主価値向上施策に加え、買収防衛策導入により与えられる一時的な保護が、どのようにしてその施策の実行に役立つのかを招集通知で説明しており、その内容が妥当であると結論付けられる」とされています。

約270社ほどが導入している事前警告型の買収防衛策に関していうと、ISSが賛成推奨を出す企業はほとんどありません。東洋建設の今回の買収防衛策は、有事導入型かと思いますので、必ずしも事前警告型のこの要件がそのまま適用されて判断されるものではないとは思います。

ただ、結果としてISSは反対推奨しており、とすると海外機関投資家はISSのレポートを参考にすることが多いので、反対票が増えるかも知れません。東洋建設の外国人株主比率はどの程度あるのか見ていないので影響度は分かりませんが。国内の機関投資家は本件は有事導入型の買収防衛策として、事前警告型とは別物として、個別判断をするのかも知れません。