コーポレートガバナンス、株式投資、企業価値、IRなどに関する投資家目線での実務ニュース ー 強い意志のある投資を目指して

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カゴメが買収防衛策の廃止を公表 - 有事導入型の買収防衛策の法的有効性は?

先日、ライオンが本年更新期限を迎える事前警告型の買収防衛策を廃止することを公表しましたが、今度は、2月3日にカゴメが事前警告型の買収防衛策を廃止することを公表しました(私の場合、M&Aニュースでプレスが自動配信されてきます)。カゴメの2月3日付の廃止のプレスの一部を紹介すると次のとおりです。

当社は、当社の企業価値・株主共同の利益を確保し、向上させることを目的として、2018年3月 28 日開催の定時株主総会において、本対応策の更新について株主の皆様のご承認を頂き現在に至っています。本対応策の有効期間は、2021年3月 26 日開催予定の当社第 77 回定時株主総会終結の時までとなっておりますが、それ以降は、本対応策を継続しないことを決定いたしました。これは、買収防衛策を巡る動向や、株主の皆様のご意見などを踏まえ、慎重に検討を重ねた結果、当社の企業価値・株主共同の利益の確保・向上にあたって本対応策の必要性が低下したと判断したことによります。なお、当社株式の大量取得行為を行おうとする者に対しては、当社の企業価値・株主共同の利益を確保・向上する観点から、当該大量取得の是非を適切に判断するために必要かつ十分な情報の提供を求めます。当社は、それに対する当社取締役会の意見等を開示し、株主の皆様が検討するために必要な期間および情報の確保に努めます。また、金融商品取引法会社法その他関連法令に基づき、適切な措置を講じてまいります。当社は、本対応策の廃止後も、中長期的な企業価値の向上に全力をあげてまいります。

買収防衛策を廃止した日本製鉄、東京製綱、ライオンをはじめ多くの企業が太字のような表現をしているところです。これはブログでも何度か書きましたが、敵対的買収者が出現して取締役会決議で有事導入型の買収防衛策を発動した場合でも、法務省経産省の買収防衛ガイドラインで求める「事前開示の原則」を充足することを主張するためにこの文言を入れているのです(芝浦機械が村上ファンドとの有事導入型買収防衛策の導入・発動を巡る攻防で主張したとおりです)。勿論、有事導入型の買収防衛策の法的有効性を示す判例が出たわけではないのですが、事前警告型の買収防衛策の法的有効性も判例が出たわけでないことを考えると、両者とも、つきつめると法的有効性は必ずしもはっきりしていない買収防衛策という点では共通とも言えます。

ところでカゴメは何故廃止するのでしょうか?同社の本日2月7日時点のホームページに掲載の株主構成を見ると、金融機関16.8%、その他法人11.2%、外国法人等7.3%、個人63.6%となっています。買収防衛策に反対するのは、国内機関投資家と外国人機関投資家です。仮に金融機関16.8%の全てが国内機関投資家であると仮定しても反対するのは、24%ですので議案の可決には全く問題ないはずです

個人が63.6%もおり、個人は議決権の行使率が低いのが少し悩ましいのですが、インターネット行使で最近は行使率もだいぶ上がっており、また行使すると基本は議案賛成ですので、いずれにせよ可決の可能性は極めて高いのです。しかし、そういう中で廃止したのは、保有することでのステークホルダーからのレピュテーションリスクと有事導入型の買収防衛策の有効性を期待しているのだと思います。

今年の株主総会で買収防衛策の更新期限を迎える企業の数は分かりませんが、廃止企業は増えるのでしょう。とすると保有する企業に対する風当たりを益々強くなりますので保有する理由のより具体的な理由の開示などが求められるようになるかも知れません。

さて、話は変わりますが、最近機関投資家と会話をするとESG投資関係では今後は人権に関する関心がグローバルでは高まってきているようです。以前にブログで有報で人権リスクを開示する企業が増えているという新聞記事を取り上げ、その必要性に疑問を感じる旨を記事に書きましたが、どうも私が不勉強でその認識には誤りがあるようです。人権は、欧州と日本とで意識が大きく異なるところですが、今後は日本企業も意識していく必要があると思いますので、来週以降でブログでも少し触れたいと思います。