中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 - 原子力産業の扱い

本日は、この1週間の保有銘柄の株価値動き、決算発表分析をしています。日経平均株価の昨日終値は前日比+437円の28,779円でしたが、各社の決算短信を見ていると2020年度通期決算の業績予想の上方修正をする会社が多いですね。なお、東証の発表した1月の東証1部企業のPERは22.8倍です。これは2013年10月~2014年3月の期間のPERと同じ程度です。当時は日経平均株価が1万4000円~1万5,000円程度でした。

今回、業績の上方修正予想をしていない銘柄もありますが、この銘柄の場合、通期の業績予想からQ1~Q3の実績値をひいてQ4数値を予測すると良いと思います。この数値を見ると通期予想を低く予想しており、実績はこれを上回るか否かが予想できると思います。アナリストがカバレッジしていない中小型銘柄の場合、単純ですが、こういう分析を丹念にしていない個人投資家はかなり多いので、今後の株価の動きのある程度の予想が出来るかと思います。

さて、前置きが長くなりましたが、本日は昨年に公表されたグリーン成長戦略の中で原子力産業に関する記載を紹介します。

(4)原子力産業
2050年のカーボンニュートラル実現に向けては、原子力を含めたあらゆる選択肢を追求することが重要であり、軽水炉の更なる安全性向上はもちろん、それへの貢献も見据えた革新的技術の原子力イノベーションに向けた研究開発も進めていく必要がある。原子力は安定的にカーボンフリーの電力を供給することが可能な上、更なるイノベーションによって、安全性・信頼性・効率性の一層の向上に加えて、再生可能エネルギーとの共存、カーボンフリーな水素製造や熱利用といった多様な社会的要請に応えることが可能である。現行軽水炉では、中露が政府ファイナンスをバックに市場を席巻しており、米英加を始めとした先進国では小型炉、革新炉に活路を見出し、2030年前後の商用化を目指して大規模政府予算を投入して R&D を加速している。目標として、①2030 年までに国際連携による小型モジュール炉技術の実証、②2030年までに高温ガス炉における水素製造に係る要素技術確立、③ITER 計画等の国際連携を通じた核融合 R&D の着実な推進を目指す。

小型モジュール炉(SMR)の取組みは次のとおりとなっております。

2020年代末の運転開始を目指す米英加等の海外の実証プロジェクトと連携した日本企業の取組を、安全性・経済性・サプライチェーン構築・規制対応等を念頭に置きつつ、積極的に支援する。海外で先行する規制策定を踏まえ、技術開発・実証に参画する。SMR で採用されている革新的技術の技術開発課題の克服について協力を行うとともに、優れた設計・製造技術をもって脱炭素技術である SMR の実現に貢献する。これらの取組を通じて、SMR の設計・製造技術をより高めるとともに、主要サプライヤーとしての地位を獲得し、SMR のグローバル展開に合わせた量産体制を確立していく

高温ガス炉については次の取組みとされています。

世界最高温度を記録した試験炉 HTTR を活用し、安全性の国際実証に加え、2030年までに大量かつ安価なカーボンフリー水素製造に必要な技術開発を支援していく。並行して、IS 法やメタン熱分解法等を含む超高温熱を活用したカーボンフリー水素製造方法についても開発を支援する。開発支援に当たっては、安全性・経済性・サプライチェーン構築・規制対応等を念頭に置きながら、技術開発・実証に参画し、海外の先行プロジェクトの状況を踏まえ、海外共同プロジェクトも組成していく。また、試験炉 HTTR の建設・運転・再稼働を通じて、規格基準策定の点でも海外に先行している状況を踏まえ、日本の規格基準普及に向けた他国関連機関との協力を推進する。

核融合についての取組みは次のとおりです。

ITER 計画については、2025年運転開始、2035 年の核融合運転開始を目指している。BA 活動においても 2021 年春の JT-60SA の運転開始やその他の研究開発を核融合原型炉に向けて着実に実施する。これらを通じ、主要機器の工学的実証とエネルギー出力状態の長時間維持技術を確立し、核融合エネルギーの実現を目指す。合わせて日本での核融合原型炉建設計画に向け各種設計や技術開発を行い、21世紀中葉までに、核融合エネルギー実用化の目処を得るべく研究開発を推進。また、核融合エネルギーへの興味喚起と相互理解を目指すアウトリーチ活動等を通じて、核融合の裾野の拡大を図ることにより、長期的な観点でより多くの企業に参加を促すとともに、海外プロジェクトに国内のベンチャー企業等が参画することを目指す。更に、発電にとどまらず、核融合炉の高温を活用したカーボンフリーな水素製造プロセスなど、カーボンニュートラルに貢献する基盤技術の研究開発を推進する。

原子力産業に私は全くの素人ですが、この内容を読む限り、再生可能エネルギーの中でも原子力の活用を政府は考えていると言えるでしょう。風力発電や蓄電池産業が新聞報道では注目されますが、ニッチな原子力関連銘柄を長期で保有することの1つの判断材料になるかと思います。