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2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略

私は本日までが正月休みですが、金融・役所などの方をはじめ本日が仕事はじめという方も多いかと思います。昨年後半から環境に関する新聞報道が増えていますが、本日は昨年12月25日に経済産業省が策定・公表したグリーン成長戦略について、原子力を中心に紹介します。

グリーン成長戦略とは、温暖化ガス排出量を2050年に実質ゼロにする工程表です。詳細は次のとおりです。

2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を策定しました (METI/経済産業省)

14の重要分野ごとに、高い目標を掲げた上で、現状の課題と今後の取組を明記し、予算、税、規制改革・標準化、国際連携などあらゆる政策を盛り込んだ実行計画の大枠を規定しており、今後関係省庁と連携し、目標や対策の更なる深掘りを検討していくというもので、あくまで大枠で詳細は今後詰めていくという位置付けになるかと思います。2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、次の内容が規定されています。

再エネについては、最大限の導入を図る。しかしながら、調整力の確保、送電容量の確保、慣性力の確保、自然条件や社会制約への対応、コスト低減といった課題に直面するため、あらゆる政策を総動員してもなお、全ての電力需要を100%再エネで賄うことは困難と考えることが現実的である。エネルギー分野における多様な専門家間の意見交換を踏まえ、2050 年には発電量の約 50~60%を太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス等の再エネで賄うことを、議論を深めて行くに当たっての一つの参考値として、今後の議論を進める。また、CO2回収・再利用を前提とした火力と水素・アンモニア発電については、依然、開発・実証段階の技術であり、今後の技術・産業の確立状況次第である。本戦略により社会実装が順調に進むことを前提として、水素・アンモニア発電は 10%程度、原子力・CO₂回収前提の火力発電は 30~40%程度を、議論を深めて行くに当たっての参考値とする。今後、エネルギー基本計画の改定に向けて、上記に限定せず、更に複数のシナリオ分析を行い、議論を深めていく。

2019年度の日本の電力構成は、火力が76%、原子力が6%程度と言われていますが、これを2050年には50~60%が再生可能エネルギー、10%が水素・アンモニア発電、30~40%が従来の火力・原子力発電となるということです。経団連会長が「人類の知恵である原子力をうまく活用しないとまずい」というコメントもあるように、原子力の割合が重要になってくると一般的に言われています。グリーン成長戦略において、原子力発電については次のように記載されています。

2050年のカーボンニュートラル実現に向けては、原子力を含めたあらゆる選択肢を追求することが重要であり、軽水炉の更なる安全性向上はもちろん、それへの貢献も見据えた革新的技術の原子力イノベーションに向けた研究開発も進めていく必要がある。原子力は安定的にカーボンフリーの電力を供給することが可能な上、更なるイノベーションによって、安全性・信頼性・効率性の一層の向上に加えて、再生可能エネルギーとの共存、カーボンフリーな水素製造や熱利用といった多様な社会的要請に応えることが可能である。現行軽水炉では、中露が政府ファイナンスをバックに市場を席巻しており、米英加を始めとした先進国では小型炉、革新炉に活路を見出し、2030年前後の商用化を目指して大規模政府予算を投入して R&D を加速している。目標として、①2030 年までに国際連携による小型モジュール炉技術の実証 ②2030年までに高温ガス炉における水素製造に係る要素技術確立 ③ITER 計画等の国際連携を通じた核融合 R&D の着実な推進を目指す

私はエンジニアではないので、この原子力の記述について深く語れる知識・経験はありませんが、素人なりに調べたレベルでは、原子力の活用ということは、使用済核燃料の保管ということも今後ますます重要になるかと思います。

使用済核燃料の処分方法は、ステンレスの容器に入れて地盤に埋める地層処分(地下300メートルより深い安定した場所に保管)が最適とされているところですが、容器が地下水と接触すると容器の変化のリスクがあり、これをベントナイトでステンレス容器の周りを埋めることが1つの方策と言われているようです。

問題なのは2050年カーボンニュートラルは30年先のずいぶんと長い話であるという点です。長期目標は、目標が壮大であるほど掲げた時は注目をあびますが、時間の経過とともに担当者も変わり、抵抗勢力も出現し、また世の中の流れも変わり、話題性が薄れることが常です。カーボンニュートラルはグローバルで見ても大枠ではその方向にあるのだと思いますが、グリーン成長戦略で定めた具体的内容がどこまで完全に実現できるのかは、甚だ疑問と思う方も多いのではないでしょうか。

「政策に売りなし」は相場の格言であり、グリーン成長戦略関連の銘柄は今後の投資テーマとなり、テーマ投資は短期では株価は上昇しますが、中長期の株式投資を考えた場合、この成長戦略の今後の進捗について注視する必要があるかと思います。