コーポレートガバナンス、株式投資、企業価値、IRなどに関する投資家目線での実務ニュース ー 強い意志のある投資を目指して

コーポレートガバナンス、中長期での株式投資、企業分析、企業価値評価、IR等について、新聞記事を中心に投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

事前警告型の買収防衛策を廃止する際のポイント(その2)

前回、9月4日に「その1」の記事を書いてから時間が経ってしまいましたが、本日は続きを書きたいと思います。なお、前回の記事は次のとおりです。

前回、いざという時のために、有事導入型の買収防衛策をきっちりと社内で議論・整理した上で廃止することが大事だと書きました。「有事の時に法律事務所を使えばいいので、今はプレスリリースにうたっておけばいいや」は駄目ですということです。というか、廃止する企業でなくともこれだけアクティビストの動きが活発であったり、事業会社の敵対的買収が普通になっている時代ですので、全ての上場企業が検討すべき事項であるのですが。

では、有事型の準備以外に廃止する際に注意すべきことは何でしょうか? それは、廃止後に機関投資家との非財務情報の対話を継続して実施することだと思います。「なんだそんなことか」「そんなのはIRが決算説明会をやっているよ」「IR取材を受けている」といった意見をお持ちの方が多いかと思います。

それはそれで勿論大事ですが、大事なのは、通期決算の今期見通しを語るのではなく、3年以上の期間での自社の中長期な企業価値向上成の施策を機関投資家と議論することであり、それが非財務情報の対話です。

敵対的買収が起きた時には、短期保有機関投資家は買収価格が市場より高い場合には直ぐに売却します。この場合でも保有を継続してくれる、つまり会社をサポートする株主は誰かというと中長期保有機関投資家になります。ちなみに、現状、個人投資家は中長期保有の「投資家」ではなく「投機家」(=企業の財務など理解しないまま株を少額で買ってる人々)です(この個人投資家の方々に、コーポレートガバナンス等も理解頂きたくて、私はブログやツイッターで記事を書いています)。

機関投資家に中長期保有の投資家となって貰うには、彼らが中長期でも株式保有を継続したいという意思を持たせることが必要です。そのためには、先ほどの3年を超える期間での自社の企業価値向上に向けた取り組みについて会話をすることが大事になるわけです。1~3年は中期経営計画期間ですので、この中期経営計画を超える期間での持続的成長かつ中長期での企業価値向上を語ることが大事です。この対話を継続して、会社の理解を深めてもらうことで、有事の際には会社をサポートして貰うのです。

この際、対話に参加する企業サイドの人は経営トップ又はこれに極めて近いポジションの役員の方であることが大事です。常務クラスの役員では駄目です。「なんちゃって役員」の執行役員(=法的な役員でない)、それ以下のIR部長などの部長クラスは100%論外でNGです。だって企業の中長期の話をするわけですので、その方針を決める責任者である経営トップに語ってもらいたいと機関投資家は考えています。担当役員や部長クラスで足る業績説明や通常のIR取材とは次元が違います。

かなり前にも非財務情報情報に関する機関投資家との対話のすすめのような記事を書いたことがありますが、この対話がつくづく大事かなと感じます。私も4~5年前には、対話って何をやるのだろうかと手探りでしたが、最近はこの非財務の対話の重要性をあらためて感じます。