中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

SBIと新生銀行の攻防(第15回) ー  新生銀行がTOBに条件付き反対。そしてSBIは反論

既に大きく報道のとおりですが、10月21日に新生銀行SBIによるTOBに対して条件付きで反対することを公表しました。

https://www.shinseibank.com/corporate/news/pdf/pdf2021/211021_announcement1_j.pdf

反対理由として次の2つをあげています。

  1.  本公開買付けは実質的な支配権の取得を企図していながら買付数に上限のある部分買付けであり、残存株主に不利益が生じるおそれがあること
  2.  本公開買付価格は、プレミアムを加重平均した場合には低水準であり、また当行の本源的価値を反映した価格と考えられないこ

1はどういうことかといいますが、SBITOBは48%を上限とするTOBのため仮にTOBに応募した株主が48%を超えた場合、SBIはその全てを取得する義務はありません。3分2以上のTOBの場合に全部買取り義務が発生するのですが、今回はそうではないので、株主に不平等が生じるというわけです。けど、TOBの上限を撤廃すると当然SBITOBに係る資金が増加するのでSBIには厳しいですよね。

ということで、早速、SBIは次のとおり新生銀行の提案に応じるつもりはない旨の反論のプレスリリースを公表しています。上記の全部買取の点は次の反論をしています、

そもそも、日本における公開買付制度上、買付後の所有割合に上限を設けることは許容されており、当該上限を付したことのみをもって本公開買付けの正当性を否定することは、日本における公開買付けの制度そのものを否定することになります。本公開買付けにおいて上限設定が必要となる理由は、公開買付届出書に記載のとおり、投資金額の合理性の観点から、当社が採用する国際会計基準に照らし、対象者が連結子会社になりうる水準を超える対象者株式を取得する必要は必ずしもないこと、及び、上限設定をしない場合、当社らが銀行持株会社となることについて銀行法上の許可等が必要となり、対象者株式の所有割合を速やかに高め、経営刷新を図ることが難しくなることにあり、恣意性のない正当なものです。従って、本公開買付けにおける上限設定の撤廃は受け入れることはできません。

これにより、新生銀行株主総会で買収防衛策の発動の是非について株主の意思を問う流れに向かうのだと思います。東京機械とアジア開発の攻防では、アジア開発の議決権を株主総会での議決権の算出から除外するという会社法の大原則にも反するようなことを東京機械は実施していますが、新生銀行も同じようなことを考えたりしているのでしょうか? 東京機械の施策に対する東京地裁の判断が待たれます。けど、アジア開発の議決権が除外されるという判断を東京地裁が下した場合、かなり衝撃ではあります。

  • 9月 9日  SBI:株式公開買付(TOB)を公表
  • 9月 9日  新生 :TOBのお知らせを公表
  • 9月17日  新生 :取締役会決議で買収防衛策を導入
  • 9月17日  SBI:「新生銀行 に対するTOBに関して」を公表
  • 9月22日  新生 :新株予約権無償割当ての発行登録のお知らせ
  • 9月24日  SBITOB期間の延長要請に対する対応を公表
  • 9月27日  新生 :TOB期間延長要請に対するSBI回答状況のお知らせ 
  • 9月29日  SBITOB期間を延長(10月25日 ⇒ 12月8日)
  • 10月 1日 新生 :買収防衛策の発動を一時見送ることを公表
  • 10月 6日 新生 :独立社外取締役協議会組成のお知らせを公表
  • 10月18日 新生 :買収防衛策に係る取締役会評価期間の延長を決定
  • 10月21日 新生 :TOBへの条件付反対を公表
  • 10月21日 SBI新生銀行の反対に対して反論公表