中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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SBIと新生銀行の攻防(第10回) ー 新生銀行はSBIの要請に応じず。買収防衛策は「一般株主利益保護プロトコル」

SBI新生銀行に対して次の4つの項目の遵守を条件にTOB期間の新生銀行の延長要請にこたえる可能性がある旨を先日公表していました。

  1. 新生銀行の株主がSBIによる本公開買付けに応募するかを判断する上で重要性の低い追加質問等は行わず、いたずらに検討の期間を延ばさないこと
  2. 新生銀行の取締役会が対抗措置の発動について株主意思確認総会で賛否を問う場合には、TOBが「企業価値および会社の利益ひいては株主の共同の利益を著しく毀損する」と判断される具体的な根拠を説明すること
  3.  株主意思確認総会を開催するとしても、実務上可能な限り最短のタイミングで開催すること
  4. 株主意思確認総会を開催するとしても、公正な形で開催すること

本日、新生銀行はこの遵守には応じず、SBIに対するTOB期間の延長要請を維持することを公表しました。

https://www.shinseibank.com/corporate/news/pdf/pdf2021/210927_Announcement_j.pdf

SBIに対するTOB期間の延長要請は、株主総体としての意思確認を行うために十分な時間の確保を目的とするものであり、延長要請に当たって、SBIにいちいち条件遵守を求められる筋合いのものではないということです。新生銀行の買収防衛策に関する株主意思確認総会のメリットとして、次のことが書かれています。

  • 日本の公開買付制度の下では、本公開買付けへの応募の判断だけでは、当行株式の保有を継続したいと考える株主の方や本来であれば本公開買付けに賛同しない株主の方も、公開買付けが成立し支配権が変わることによりかえって当行の企業価値が下落することを恐れ、取り残されまいとして売却・応募せざるを得ないと考えてしまう構造的問題(強圧性)があるのに対し、株主意思確認総会では、本公開買付けの是非を株主様総体として何ら制約なく判断可能になります。
  • 当行の買収防衛策は、従来型の買収防衛策と異なり、株主意思確認総会を必須の前提としており、買収防衛策の発動の確定には必ず株主意思の確認が必要な仕組みとなっています。つまり、株主の皆様ご自身が、本公開買付けに応じるよりも優れた選択肢があると判断した場合にのみ発動が確定します。

新生銀行は、SBIによるTOBについて、新生銀行の株主はTOBに取り残されまいとして売却・応募せざるを得ない旨考えてしまう構造的問題(強圧性)があるとしております。そして、これに起因して、一般株主の応募判断が歪められること、ひいては一般株主の利益が毀損されることを防ぐための、いわば「一般株主利益保護プロトコル」とも呼ぶべき仕組みが新生銀行の買収防衛策であると主張しています。

平易にいうとTOBに対して株主に真に応募の意思はなくとも応募せざるを得ないのが新生銀行の株主であり、株主の利益の確保・向上に資するため、対抗措置発動の是非については株主意思確認総会で株主の判断を仰ぐということを言っています。

今後は、新生銀行が4つの項目の遵守要請に応じないため、SBITOB期間の延長要請を拒否し、結果、新生銀行TOB終了前に新株予約権の割当基準日を決定すべく、対抗措置発動という流れになるように想像します。