中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

SBIと新生銀行の攻防(第8回) ー 新株予約権無償割当てに係る発行登録

9月25日号の週刊東洋経済で「ビジネスと人権」の特集記事がありました。人権は昨年の機関投資家とのエンゲージメントで今後のホットな話題になると言われた経緯がありますが、その通りでここ最近、人権への世の中の動きが急速に高まっています。グローバルで事業展開する企業は、サプライチェーンにおける人権の取組みまでしっかり把握しておかないと欧州の顧客から取引を打ち切られるリスクも大です。欧州で事業活動をする日本企業は、人権の最近の欧州の動きをしっかり勉強することがとても大事かと思います。

さて、新生銀行ですが、本日、次のとおり「新株予約権無償割当てに係る発行登録に関するお知らせ」を公表しています。

https://www.shinseibank.com/corporate/news/pdf/pdf2021/210922_Announcement_j.pdf

これは何かお分かりでしょうか? 買収防衛策の対抗措置として新株予約権の無償割当をするには、TOBの期間終了・決済より前を基準日とすることが重要であることは前に記事で書いたとおりです。理由は買収防衛策の狙いは、買収者の株式保有比率を希釈化させることにありますが、TOB終了後には買収者の保有比率が高くなってしまっているため、より高い効果を発揮するには、TOB満了前に基準日を設定する必要があります。

しかし、取締役会で新株予約権の無償割当を決議した後、有価証券届出書を提出する日から新株予約権の無償割当基準日までたしか27日程度を要するとされています。つまり、結構な日数がかかるわけであり、この間にTOBが終了しないようにするため事前に発行登録をしておくことが考えられます。発行登録をしておけば、無償割当の取締役会決議の後、10日程度で基準日を設定できるはずです。新生銀行としては、対抗措置の発動の決定後、基準日をなるべく早く定めることができるよう今回の発行登録をしたということになります。