中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

気候変動への株主圧力の高まり ー 同業と比べて見劣りしない程度に取り組むことが肝要

本日の日経平均株価終値は前日比+2円でしたが、一方、東芝の株価は▲200円と大きく下げています。理由は言うまでもなく、CVCキャピタルの買収提案がなくなる可能性大との報道によるものです。報道によれば、CVCキャピタルからの買収提案は初期的なもので本格的な提案ではないため検討する必要はないということを東芝は考えている様子です。「TOBで売り抜けられる」、「物言う株主が存在するため、TOBがあった場合、TOB価格はつり上がるかも」と期待して東芝株を購入した株主は、元社長の車谷氏に相当腹が立っているかも知れません。

さて、本日は、少し前になりますが4月3日の日経新聞の記事「気候変動 株主圧力一段と」について触れます。記事の内容としては、企業に気候変動に関する戦略策定や情報開示を株主が求めることが増えているということです。

住友商事に対しては、環境NGOのマーケット・フォースが次のとおり気候変動対策の改善を求める提案をしています。

また、三菱UFJフィナンシャル・グループに対しても、環境NGOが次のような提案をしている模様です。

この1~2年で環境NGOなどが環境に関する株主提案をするケースが増えており、昨年は、ある環境NGOがみずほフィナンシャルグループに気候変動に関する提案をし、株主提案自体は否決されたものの、北欧の機関投資家 が賛同するなどして、当初の想定を上回る35%近い賛成がありました。

これらの環境NGOは、アクティビストのようなファイナンスのプロでなく、そのため企業に株価向上や株主還元の増加を求めるのが狙いではなく、純粋に「環境保護が大事」という真面目な団体かと思います。しかし、それだけに株式投資などの観点が頭にない、融通のきかない「環境大好き集団」とも言えますので、逆に扱いが面倒かも知れません。

とは言え、企業としては、環境開示・環境問題にあまりリソースを割くのは得策ではありません。環境の関心の高まりを背景に監査法人系の環境コンサルみたいな輩が環境対策の需要性を煽るケースなども最近多いかと思いますが、あまり真に受けない方がよいかと思います。監査法人系は、内部統制、IFRSなど新しい制度が出るたびに商売のため「御社このままではまずいですよ」といって企業を煽る傾向が非常に強いのですが、環境に取り組むコストが高く、結果、企業の営業利益にマイナス影響を及ぼすとなると本末転倒です。

コーポレートガバナンス・コードでもESG開示が重要になる中、環境の開示対応も重要になってきてはいますが、頑張り過ぎるとコストばかりかかるので、同業と比べて見劣りしない程度に取り組んでおくのが肝要かと思います。先進的な取り組みをして目立つ必要はないですが、対応が遅れて目立つのはNGといった具合でしょうか。