中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

今年の株主総会のトピック:気候変動への株主の関心の高まり - TCFDへの賛同表明をした企業は今年の株主総会は要注意

非常事態宣言が出されて昨日は第1日目だったかと思いますが、ニュースを見ると昨日は東京都内では通勤者もだいぶ少ない様子でした。私はJR品川駅の港南口方面に勤務先があるのですが、毎日下車する品川駅の朝の人の数も第1回目の非常事態宣言の時に比べるとかなり少ない印象でした。

本日は3月期決算企業のQ3決算が1月下旬から始まるので、保有銘柄と各銘柄の競合他社の先週1週間の株価、IRニュース、各銘柄のQ3決算発表日の確認などの作業をしています。

1月8日の日経新聞に「気候変動 発言力増す株主」のタイトルの記事がありました。イギリスのフィナンシャルタイムズの記事で、2021年の株主総会では気候変動に関する株主提案が増える可能性があるということです。

環境への高まりに伴い当然の予想かと思います。昨年の株主総会では、みずほフィナンシャルグループに環境関連のNPOが環境戦略に関する開示を求める株主提案をして、これに対して相当数の賛成があったことが話題になりました。以前にブログでも次のとおり紹介しております。

このような中にあって、私は本年の定時株主総会で環境絡みで注意すべき企業は、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同した企業であると考えています。TCFDについては、環境省のホームページで次のとおり記載されています。

金融安定理事会により設置された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は、年次の財務報告において、財務に影響のある気候関連情報の開示を推奨する報告書を2017年6月に公表しました。企業が気候変動のリスク・機会を認識し経営戦略に織り込むことは、ESG投融資を行う機関投資家・金融機関が重視しており、TCFDの報告書においても、その重要性が言及されています。なお、環境省は、報告書を踏まえた民間の取組をサポートしていく姿勢を明らかにしていくため、TCFDに対して正式に賛同の意を表明しています。

日本でもTCFDに賛同した企業は結構あり、たしか約200社程度だったかと思います。これは、東証1部企業でいうと10%程度といったイメージになります。TCFDの対応に人的リソースを割けていない企業にとっては、「TCFDに賛同するとは先進的な取り組みをしているな」と感心する方もいるかも知れません。しかし、これは良くある間違いです。

TCFDに賛同するのは、実はそれほど難しいことではなく、今現在は求めに対応ができていなくても将来対応していくという心構えがあれば、比較的容易に賛同が出来ると言われています。このため、ひとまずTCFDに賛同したという企業も案外多かったりするようです。私は環境の専門家ではないので、TCFDに精通しているわけではないですが、証券会社時代に仕事を良く一緒にしたあるコンサルティング会社の人と以前に酒を飲んだ時にそんな話を聞きました(勿論、どの企業がどういう対応レベルにあるかは教えて貰えませんでしたが)。

環境への関心が高まる中、本年の定時株主総会において、個人株主や環境アクティビストから、TCFDに賛同した理由、TCFDへの賛同からこれまでの対応行動、今後詳細な対応をするのであればそのスケジュールなどの詳細な質問が出る可能性も高いと思いますので、TCFDに賛同表明した企業はしっかりとした準備が必要かと思います。