中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

買収防衛策の導入・継続に向けて③ - 国内機関投資家の賛成確保に向けての進め方

本日は買収防衛策の導入・継続に向けての第3回目になります。前回は、買収防衛策の導入には株主総会の承認(普通決議)が必要になるところ、外国人株主の賛成は期待できないため、「国内機関投資家の賛成を得ることが肝」ということを書きました。前回の内容は次のとおりです。

国内機関投資家の買収防衛策に対する判断基準ですが、非常に厳しくなっています。4~5年前までは買収防衛策に賛成してくれる機関投資家も結構多かったのですが、ここ1~2年で各社とも判断基準を一層厳しくなっています。

理由は簡単で機関投資家に資金の運用を委託しているアセットオーナー(GPIFほか)が買収防衛策に基本的に反対しているため、機関投資家も判断基準を厳しくせざるを得ないのです。オーナーが反対方針のため、機関投資家はこの方針に反すると運用資金を引き上げられる可能性もあるからです。

という環境下において、国内機関投資家の賛成確保に向けた動き方について本日は紹介します。機関投資家の賛成を得るための動きは次のとおりになります。

  1. 9月末時点の自社の実質株主判明調査を行う
  2. 1の判明結果は11月上旬になるので、判明した株主の中、保有株式数の多い機関投資家を中心に本年の定時株主総会の議決権行使の個別開示結果で買収防衛策議案への賛成件数を見る
  3. 2の結果、賛成件数が一定数ある機関投資家を選別し、現状の議決権行使基準を分析。賛成件数ゼロの機関投資家は賛成は今後も見込めないため無視する。なお、機関投資家は毎年、議決権行使基準を改定しますが、改訂の時期は年明け以降になるケースが多いです
  4. 3で選定した当該機関投資家と対話(エンゲージメント)を実施し、①買収防衛策議案への賛成の条件 ②今度の定時株主総会での買収防衛策に関する議決権行使基準の改訂の方針を確認する
  5. その上で、機関問投資家の賛同が得られるよう自社の買収防衛策のスキームを策定、または見直しを実施

以上のような流れを実務上は踏むことになるかと思います。要するに年内に機関投資家の議決権行使に対する考えを分析して、年明けに賛成をしてくれる可能性のある機関投資家を訪問して、議決権行使基準の改訂の方向性と改訂後の基準での賛成の可能性を分析するというになります。

次回は、国内機関投資家が賛成するためのポイントについて紹介します。