中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

敵対的買収の増加の中での企業の対応策-準安定株主の確保が今後の肝

12月14日の日本経済新聞でも報道されていましたが、HOYAが東芝子会社であるニューフレアテクノロジー(6256)に対するTOB(株式公開買付)を実施することを12月13日に発表しました。

東芝はニューフレアへのTOBを11月に発表しており、12月25日を期限に完全子会社を目指している中での買収提案になります。ちなみにHOYAの公表により、ニューフレアの株価は1,400円もアップしました。

新聞報道によれば、HOYAは東芝やニューフレアと協議をしていないようで、いわゆる敵対的買収にあたります。コクヨによるぺんてる敵対的買収のケースや伊藤忠商事によるデサントの買収の件など敵対的買収をタブーとする社会の見方がだいぶ薄れているように感じます。

スチュワードシップ・コートが策定される前は、機関投資家の議決権行使の内容は外から一切不明でしたが、同コードによる議決権行使結果の個別開示の下では、議決権行使結果がガラス張りとなり、どの議案に賛成・反対のいずれを行使したのかがつまびらかになります。結果、合理性のない議決権行使をした場合には、機関投資家はアセットオーナーから行使結果の妥当性が問われるのです。

このように機関投資家の判断のベースにある基準が変化したこともあり、敵対的買収も合理性があればタブーとは思われなくなってきているのだと思います。誰が議案を提案したかではなく、その議案の内容に合理性があるか否かが問われるのですから、合理性のある敵対的買収も認められるのは当然の流れかと思います。

では、発行体である上場企業は今後、どうすればいのでしょうか?

敵対的買収への対応施策としてすぐに思いつくのは買収防衛策ですが、買収防衛策はアセットオーナーが強く反対するので、アセットオーナーから資金運用の委託を受けている機関投資家は買収防衛策議案に反対せざるを得ず、今後とも廃止は加速するのだと思います。

買収防衛策に頼れないとすると、あとは株価をあげて、株主に市場株価は今後更に上がるという期待を持たせることにつきます。

敵対的買収が起きた時に会社が望むことは、株主が市場価格にプレミアムのついた公開買付価格に応じないことです。そのためにどうすべきかというと、プレミアムの付いた公開買付価格よりも、自社の株価は将来上昇するであろうという期待を株主に持たせることが必要になります。

そして、そのためには、そういう期待を抱かせる経営戦略・財務戦略を機関投資家に対話を実施して説明するということになるのだと思います。と言うのは簡単ですが、実際には難しいですよね。しかし、持ち合いの解消も減る中、銀行、事業会社、生保などの安定株主が減っていくわけですので、これまで安定株主ではなかった機関投資家や個人株主をいかに「準安定株主」、つまり会社の与党株主として確保できるかがポイントになるのだと思います。

個人株主の純安定株主という点では、個人株主説明会や工場見学会も有効と私は考えます。工場見学会まで行く株主(高齢者が多いですが)はその会社のファンであるケースも多く、長期保有が期待できるからです。