中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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フィットネスクラブの2社が2020年度第2四半期決算を発表―フィットネス銘柄の株価は今後回復するのか?②

週末に続いてフィットネスクラブの今後の見通しについて書きます。株価が低迷したフィットネスクラブ銘柄の株価回復の可能性を考えるには、フィットネスが流行った理由を整理する必要があります。

テレビ東京での過去のニュース番組などを見ると、流行した理由が良く分かりますが、要するに「人生100年時代」のキーワードで伸びてきたのがこの数年のトレンドで、日本では、フィットネス人口に占める50代~70台の割合が非常に大きくなっています。高齢者が長生きのためにフィットネスに通っているというのがフィットネスの流行の根底にあります。ルネサンスの2019年度の決算説明会資料を見ると、同社の売上高の50%を占めるフィットネス会員の50%は50代以上の高齢者となっています。

それでは、コロナが終息した後にフィットネスを利用する人が元のように戻るかということがフィットネス銘柄の回復において極めて重要になりますが、私は戻らないと思います。

ワクチンが開発されたとしても、ワクチンの副作用が分かるにはまだ先になるので、であれば、高齢者が「ワクチンが開発されたのでこれで安心だ。さあジムで皆で汗をかこう!」ということを考えるとは思えません。コロナのワクチンが開発されてから、数年経過してようやくコロナが過去のものになった頃にフィットネスに通い始めるのだと想像します。そもそも運動などはジムなどに行かずとも外でウォーキングしていれば事足りるものです。

2、3年前のテレビ東京ワールドビジネスサテライトなどを見ているとフィットネス業界は「人生100年時代に必須」と言われて、70代、80代の高齢者が一生懸命に集団でジムで汗を流している姿が映っていたり、フィットネスビジネスとかいう雑誌の編集長が喜々として明るい表情で未来を語っていますが、今やなんとも悲しい状況です。当時、この編集長は「高齢者は病気になりたくないからフィットネスに行く」ということを言っていましたが、今は「病気になりたくないからフィットネスに『行かない』」です。

なお、20代から40代の社会人にとって大人の習い事としてフィットネス需要があるのかということもポイントになりますがが、「ケイコとマナブ」が以前に調査した結果によれば、習い事について女性の1位は英語、2位がヨガ・ピラティスで、3位がフィットネス、男性では5位あたりがフィットネスで、社会人の習い事としてフィットネスの順位は決して高くはないです。

ということで、フィットネス関連の業績見通しは今後かなり厳しいものになると思います。これまでの需要増に対応すべく設備投資を積極的に進めたことによる固定費の回収も今後は難しく、利益低迷も続くでしょう。オンラインでのフィットネス事業をはじめた企業も増えていますが、オンラインであれば利用料金も低く設定せざるを得ず、また大きな投資が不要のため参入障壁も低く、新たな参入業者が増え競争が激化します。などなど考えると、関連銘柄がコロナ前の株価に戻る可能性は極めて低いと私は思いますので、今が割安としてフィットネス銘柄を買っても今後の中長期での株価上昇は期待できないと考えます。