中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・コンサルティング / 長期での中小型株の割安株投資情報

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書評「アパレル興亡」(岩波書店 / 黒木亮)

この本は本年2月に出版されましたが、東京スタイルという実在した会社(現在は経営統合で消滅?)を中心に日本のアパレル業界について書かれた小説です。

東京スタイルは中堅のアパレルメーカー(上場企業)で、以前に村上ファンド村上世彰氏が、同社に株主提案をするなどして世間でかなり注目を浴びた会社ですが、東京スタイルの創業から、中興の祖といわれた二代目社長(サラリーマン社長でありながら何故か30年以上社長)の会社人生、村上ファンドとの攻防、二代目社長死去後のアパレルメーカーとの統合までをアパレル業界の栄枯盛衰とともに書かれています。

小説の主人公である二代目社長は、東京スタイル元社長の高野義雄氏と言われていますが、村上ファンドとの攻防については村上氏の「生涯投資家」により詳しく書かれていますが、高野氏は会社を私物化し、ワンマン経営で上場企業の社長の自覚がない人物として描かれております。「生涯投資家」を読んでも、そんな人物の印象を持ちましたので、実際の人物像も同じなのでしょう。

東京スタイルは、高野氏が死去した後に、中島氏という方が社長になり、その後、任期途中で中島氏は社長と取締役を解任されております。小説では、中島氏は高野氏のイエスマンで、かなりボンクラな人物でM&Aで規模だけ大きくしようとして、結果、当時経営統合をした会社の役員によって解任された様子が詳しく書かれています。解任時の狼狽した様子も、想定外の事態に立ち向かう反射神経や丹力のない男として書かれており、おそらく実在の人物も同じなのだと想像します。

私は小説はあまり読まないのですが、ネットでこの本が面白いという評価があり、今回購入したのですが、正直、経済小説としてはレベルは低いです。経済小説では、トヨタ自動者の内情を書いた「トヨトミの野望」、NHKで昔ドラマ化放送された「ハゲタカ」などを過去に読んだことがありますが、いずれも元新聞記者が作者で文章表現も緻密でストーリーの完成度も高いです。この2冊に比べるとかなりプアーな内容です。

このアパレル興亡の作者である黒木亮という方は、元証券会社のサラリーマンということで、新聞記者のように文章を書く訓練をされていないのだと思いますが、文章に重みがなく、場面がころころ変わり、小説としてはレベルは低いです。ただし、内容は薄いですが、短時間でアパレル業界、東京スタイル村上ファンドの攻防などをストーリー形式で知る上では便利な本かとは思います。