中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

書評「村上世彰、高校生に投資を教える」(角川書店 / 村上世彰)

前回の投資に関する本に続いて、先週、この書籍が本屋で目にとまりましたので、購入しました。著者は、有名な村上ファンド村上世彰氏です。

大きな企業で勤務しているような社会人の方であれば、著者のことを知らない人の方が少ないと思いますが、東京大学法学部を卒業、経済産業省で官僚としてコーポレートガバナンスの普及などに従事した後、独立して村上ファンドを設立した方です。最近では、芝浦機械へのTOBで久しぶりにマスコミの注目を浴びましたが、過去には物言う株主として、投資先企業に様々な提案をしてきました(今でも、自己資金で色々と水面下で物言う株主の活動をしています)。

著者は「生涯投資家」という書籍を数年前に出しており、過去の昭栄や東京スタイルに対する敵対的TOBの背景などが書かれており、興味深い内容でしたが、今回の書籍はタイトルのとおり高校生に「株式投資とは何か?」を教える内容になっています。

財務を理解して株式投資をしている方には、初歩的な事項ばかりで「こんな初歩的なこと知っているよ」ということで、あえて購入するまでの必要はないと思いますが、株式投資をしたことのない社会人の方には、一読の価値がある書籍と思います。

ROE、PERといった極めて初歩的な用語の解説から、投資の基本的姿勢が素人向けに書かれています。株式投資を全くやったことがないという社会人の方も世の中には意外に多く(こういう方は、資産数億円以上の富裕層でもない限り、投資に無縁の状況でどうやって資産を増やすつもりなのか疑問ではあります)、投資を考えるのに最初に読むのに良い本だと思います。

書籍の後半では、日本では金融教育がされておらず、結果、金融リテラシーの乏しい社会人が多くなっていることが問題と書いてありました。私の経験上、株式投資に詳しい方は、経済情勢を良く理解していると思われる方が多い印象を持ちます。理由は単純で、経済情勢や個別企業(業界)の業績に精通しないと投資で金儲けが出来ないため必然的にこの手の情報に精通するということです。

おそらく高校生の頃から、「金融」「株式投資」といったことについて真剣に教育の場で教える(高校の学校教員は金融リテラシーはゼロですから、投資家(運用会社)が講師となり学校で教えるのでしょう)ことが、日本の資本市場の発展には重要なのだと思います。

金融や株式投資などの金融リテラシーのあるお父さんまたはお母さんのご家庭であれば、高校生や大学生のお子さんにこの本を買ってあげて、読んだ後、家族で株式投資のについて会話をするとお子さんの金融知識の教育にもなるかなと思いました。