中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

書籍紹介「NO.1アナリストがいつも使っている投資指標の本当の見方」(日本経済新聞出版社) - 株式投資指標の整理にかなりお薦めです

前回に続いて株式投資関係の書籍を1冊紹介します。週末にブックオフに行き3冊ほど書籍を購入したのですが、その中の1冊がこの本です(時々私が週末に車で行くブックオフは大型店で、10年以上前の色々なジャンルの良書もおいてあり、結構気にいってます)。

さて、この本は、2015年5月に出版されたもので、著者は吉野貴晶氏という方(1965年生まれ)で、大和証券チーフクオンツアナリストで日経ヴェリタス人気アナリストランキング・クオンツ部門で2002年から2015年まで連続1位を獲得している方のようです。

投資指標ということで、ROE、PER、PBRといったお決まりの投資指標が書かれていますが、それぞれの指標について、投資銘柄を選別するという視点から一歩掘り下げて解説がされています。

世に出ている投資指標の本は、指標の単純説明ばかりで、どういう局面でどの数値を用いて、どのように活用すればよいのかが一切触れていないケースがかなり多いかと思います。特に大学教授、公認会計士あたりが書いた本にその傾向が強いです。

基本的な例でいうとPERの分母の利益には、「当期利益を使います」という程度の財務会計を勉強した大学生でも分かるような解説で終わり、「予想数値を使う必要はないの?」「税引後経常利益の数値を使わないでよいの?」などの銘柄スクリーニングをする際に一番知りたい点が一切触れられていないケースが多いです。

その理由は簡単で、大学教授、公認会計士などは株式投資という目線で企業を分析するプロではなく、つまり投資の素人であり、教科書的なことは言えるものの(私でもすらすら言えます)、株価を踏まえた実務に踏み込んでの厚みのある説明が全く出来ないのです。ゆえに、個人投資家の初心者から見ても、とてもうすっぺらい内容の本が多いのです。

しかし、この本は株式投資実務で使えるよう必要最低限のことが分かりやすく書かれています。著名なアナリストが書いているから当然と言えば当然とも言えますが。株価の割安度を判断する指標の例にPERと株価キャッシュフロー倍率がありますが、PERをより重視すべき理由であったり、株価キャッシュフロー倍率を使う場合のキャッシュフローはいつ時点のものを使うのかなどが整理でき、読んだ後にすっきりしました。

投資指標にある程度精通して株式投資をしている方であれば、1時間から1時間30分もあれば、全部読めるかと思います。

プロの投資家である運用会社の方には百も承知のことばかりでしょうが、そうでない方、例えば上場企業のIR部門の部長の方(私の経験上、商社やメガバンク等の金融系を除き、製造業や小売りなどの一般事業会社のIR部長は、営業出身の方も結構多く、このようなバックグランの方は投資指標などを理解されていない人がとても多い)や個人投資家の方にお薦めの本かと思います。