昨日、村上ファンドが東芝機械に対する株式公開買付(TOB)の期間を延長したこと
を東芝機械が公表しました。1月21日に開始され、3月4日を期限としていたTOBの期間を60営業日に延長し、4月16日までとなりました。経緯を簡単に纏めると次のとおりです。
- 2月12日 東芝機械は臨時株主総会を3月27日に開催することを決定
- 東芝機械は村上ファンドに対してTOB期間の延長(期限を4月16日まで延長すること)を要請。2月19日の正午までに当該要請に応じない場合、次の方策をとることを東芝機械は検討
- ①村上ファンドが延長する場合:東芝機械は株主総会で買収防衛策の導入と対抗措置発動を諮る ②村上ファンドが延長に応じない場合:東芝機械は株主総会に諮ることなく、取締役会決議で対抗措置を発動。 この場合でも東芝機械は、発動後ではあるが、3月27日に株主総会を開催し、事後的ではあるが株主の意思を確認する
- 2月18日 TOB期間の延長を村上ファンドは承認
- 結果、3月27日に東芝機械の臨時株主総会が開催され、買収防衛策の導入と対抗措置の発動が議案として上程される予定
流れのみを簡潔に纏めると上記のとおりとなります。臨時株主総会が開催されることになりますが、株主総会の決議について村上ファンドは特別決議を経ることを要求しています。一方、東芝機械は普通決議を主張しています。特別決議の方がハードルが高いのですから、東芝機械としては、普通決議を求めるのは自然ですよね。
そもそも、買収防衛策は特別決議事項などとは会社法では一切規定されていないので、特別決議が要求される理由は個人的に少し疑問があります。たしかに過去にブルドックソース事件で株主総会で80%超の株主の賛成を得て対抗措置が発動されましたが、あれは結果としてそうなっただけです。
さて、今後はどうなるのでしょうか?私の勝手な想像ですが、特別決議が得られなかった場合でも東芝機械は対抗措置を発動し、それに対して村上ファンドは有事導入型の買収防衛策の法的有効性がないことを主張し、新株予約権発行の差止めの訴えを提起することになるように思います。
村上ファンドは、東芝機械が昨年6月に事前警告型の買収防衛策を廃止しておきながら、突如として取締役会決議で買収防衛策を導入したことが大問題と言っているのです。これは普通に考えると完全に東芝機械の後出しジャンケンです。
これが許されるなら、平時に株主総会の決議を得て、買収防衛策を導入している300社超の上場企業は、これまで全く無駄な作業をしていることになります。
個人的には、この有事導入型の買収防衛策の効力はいかがなものかと考えますが、村上ファンドが企業価値を著しく損う悪意のある者という認定がされるのであれば、東芝機械に勝ち目があるような気がしないでもないですが、問題は村上氏が異端者扱いされた2000年代前半に比べて、現在は、村上ファンドのような物言う株主は市民権を得ている点です。
日経新聞でも頻繁に株主アクティズムについてコラムにも書かれていますが、すべてアクティビストは企業の改革者であるという論調になっています。
とすると、村上ファンド=企業価値を著しく毀損する者という判断は難しいと考えるのが普通の考えではないでしょうか。今後、どうなるか引き続き注視して行きたいと思います。