中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

コロナウィルス感染症での株価低迷を背景に欧米が外資規制を強化ー今後、買収防衛策を許容する動きになるか

5月2日付の日本経済新聞に「外資の企業買収 阻止急ぐ」という見出しの記事がありました。内容はコロナウィルス感染症拡大に伴う株価低迷の中、欧米各国が外資規制を強化しているというものです。少し前には、EU外資規制を強化するという記事が日本経済新聞に掲載されており、また、5月1日にはインドも外資規制を強化するという記事が出ていました。日本経済新聞で短期間でこれだけ外資規制が取り上げられるということは、それだけこの動きが顕著ということです。

言うまでもありませんが、各国が外資規制の強化に動いている背景には、株価が低迷する中、潤沢な資金を持つ中国企業による買収を防止することがあります。世界の投資銀行に、中国企業が欧州の航空企業の買収の可能性の相談もしているようで、リスクが高いということです。米国では、事前警告型の買収防衛策を導入する企業も増えているようです。

さて、日本に目を向けますと、改正外為法が5月8日から施行されます。コア業種といったように3つの区分に分かれ、コア業種に属する企業の株式の1%以上を外国投資家が取得する場合、政府への事前の届出・審査が必要になるとともに、一方で、役員の派遣等の株主提案のような行為を行わない場合、つまり純投資の場合には、届出が免除されます。

しかし、届出の結果、全ての株式取得行為の実施が中断されるということはまずなく、あくまで国の安全を損う恐れの高いケースに限定されると思われます。とすると自社の買収リスクを防ぐには、外資規制だけでは必ずしも十分ではなく、事前警告型の買収防衛策が有効な対抗策になります。

国内の機関投資家はアセットオーナーを慮り、これまでのところ投資先企業の買収防衛策には厳しいスタンスですが、株価がここまで低迷すると企業価値ひいては株主共同の利益を損う敵対的買収者の出現可能性が今後高くなり、機関投資家は今後、買収防衛策を許容する動きが出てくるかも知れません。

買収防衛策の在り方の議論は2005年頃に経済産業省法務省ガイドラインを制定し、一度整理されていますが、それから15年経過したこともあり、今後何らかの議論が開始される可能性もあるかも知れません。外資規制の運用と併せて上場企業各社は注視する必要があるかと思います。