本年6月27日開催の安藤ハザマの定時株主総会においてオアシスが株主提案をしました。内容は次のとおりで、定款第3条に次のように安全衛生管理の徹底の規定を新設することを求めるものです。
(安全衛生管理の徹底)
第3条 当会社においては、「安全はすべてに優先する」ことを当会社の安全衛生の基本方針として、役職員一人一人が、火災・事故等の、安全衛生に関する事故を決して発生させることのないよう、安全衛生管理を徹底する。
安藤ハザマは、2018年7月にビルの施工工事の火災事故で、数名の死亡事故を起こしており、この事故を意識しての株主提案です。
2019年6月28日開示の安藤ハザマの臨時報告書によると、この株主提案に対する賛成率は30.14%で否決されています。否決されたもののこの数値を高いと見るか低いと見るかですが、私はかなり高いと思います。
オアシスの保有比率は数パーセントである中、少なくとも20%以上の株主が賛同しているということです。具体的に誰が賛成したのかは開示されませんので不明ですが、議決権行使助言会社のISSはこの株主提案に対して賛成推奨をしています。ここから推測するに外国人株主の賛成が大きかったのではと推測します。
では、投資ファンドであるオアシスが株価向上や配当増に直接結びつかないこのような株主提案をした狙いはどこにあるのでしょうか?
投資ファンドをはじめ投資家(私のような個人投資家も)にとっては、自分の手元に入るキャッシュが関心の全てであり、他人の生命・身体の安全などは本来どうでも良いところです。
勿論、人の死亡により、訴訟に発展し、損害賠償や営業停止処分により投資先企業の損益に影響があれば、株価に大きなマイナス影響が出るので話は別です。
しかし、当たり前ですが、このような定款変更をしても事故防止には結びつきません。株主提案の真意はオアシスに聞かないと分かりませんが、少なくともこの提案によって、個人株主はオアシスは、人の命についても心配する株主であるとの好印象を持つのではないでしょうか。
昨年の株主総会では、「配当性向200%を求める」、「配当金額200円(会社提案30円)を求める」などの外資系の投資ファンドによる株主提案がありました。
しかし、これらの提案は、ファイナンスや資本の論理上はとても正しいのですが(そもそも投資ファンドはコーポレートファイナンスのプロです)、内容が過激であるため、原理主義者のような印象を与え、国内の機関投資家や個人株主の賛同が得られませんでした。
今回のようなオアシスの提案をすると、「アクティビストとはいうものの、安全を考える投資ファンドであるな」という印象を個人投資家は持つと思います。今はやりのESGと関連性が強い提案と言えます。
私は、1年近く前にブログで、株主提案を通すには、ファイナンス上の論理だけでなく、義理人情も踏まえて行動する日本の個人株主(特に、30年以上1つの会社に勤務しながらも役員になれずサラリーマン人生が終わりながら、何故か定年後もOB株主として会社を応援する個人株主)の賛同を得るには、株主提案の内容が分かりやすく、提案自体が「株主フレンドリー」な印象を与える必要があると書きました。
今回のオアシスの提案は、個人株主の賛同を今後得るための「地ならし」の印象を私は持ちました。勿論、あくまでこれは私が受ける印象であり、オアシスの真意は分かりません。
安藤ハザマがオアシスと水面化でどういう動きをしているかは不明ですが、ゼネコン銘柄では、戸田建設とシルチェスターの攻防と併せて(買収防衛策が発動されるか否か)、この安藤ハザマとオアシスの攻防も注視したいと思います。