M&Aに絡むのれんの減損損失が拡大との記事が7月19日の日本経済新聞に掲載されています。2018年度は1,550億ドル(約16兆円)と前年度比で66%増とのことです。
のれんとは、超過収益力をいます。例えば、純資産が100億円の会社を150億円で株式買収をすると50億円(=150億円-100億円)がのれんとなります。
要するに、ブランドや人的資産などの無形資産を加味した対象会社の株式価値が50億ということです。
そして、この50億円は、日本会計基準を採用する会社では最長20年の期間で償却され、毎期のPLにマイナス形状されます。一方、海外に多いIFRS採用会社は、毎期の償却は不要ですが、買収先企業の業績が悪化した場合には、資産価値を引き下げる減損損失の計上を行うことになります。
記事によれば、2018年度は世界で約4兆ドルのM&Aが実施され、買収代金はEBITDAの14.7倍とのことです。
これは、対象会社を100%買収した場合、買収資金を回収するのに営業利益(これに減価償却を足し戻します)の約15年かかるということです。企業を買収すると、通常は対象会社に有利子負債があることが多いので、いわゆるEV(=株式時価総額+ネットデット)となると、15倍より大きいということかと思います。借金のついた会社を買収しても買収資金の回収に15年以上かかるというのは回収期間が長いかと思います。
もっとも買収した後に徹底したリストラを実施して、EBITDAを向上させるので、実際には、回収期間はもう少し短くなるとは思います。
なお、新聞記事にも書いてありますが、減損損失は、現金の支出を伴うものではありませんのでキャッシュフロー上はマイナスになりません。しかし、PLの最終損益にマイナス影響がありますので、自己資本が減る可能性があり、結果、負債比率が高まることになるので、格付が低下することにもなります。
買収をする場合には、このようにのれんの金額を意識する必要があります。
DCF法で株式価値算定する場合、対象会社の将来の事業計画に基づくフリーキャッシュフロー予想をうのみにすると事業価値が大きくなり、結果、株式価値が大きくなります。純資産との乖離が大きくなり、のれんが膨らむことになるので、事業計画の確度を精査することが重要です。