最近の新聞報道などを見るとプライム上場企業で女性役員30%云々が言われているようです。けど、正直なところ女性役員が30%いてもBtoB企業の業績には全く影響ないと思います。「業績向上に関連有」とする話も稀に聞きますが、企業で実務をしている私の感覚ではまず関連性はないですね。プロパーの女性役員を無理やり、極めて少数の女性社員母集団から選定しても、能力の乏しい人材を無理やり役員にするだけであり(能力が乏しくても重要性の乏しい部門を任せているのであれば何ら害はないですが・・)、そんなことよりも、男女問わず「中途採用者の役員を30%以上」にした方が株価向上にはプラスです。プロパー社員である以上、男性だろうが女性だろうが差はないです。プロパーより中途採用者が大事です。ちなみに、私は投資先企業の役員の女性比率など関心ゼロです。逆にそこを強調する企業は「大丈夫?」と不安になります。
さて、前置きはこのくらいにして、本日は第1回ということで、取締役選任議を判断す際のプロである機関投資家の視点を紹介したいと思います。
個人株主の方はどういう基準で投資先企業の取締役に賛否行使をすればよいでしょうか?ほとんどの個人株主の方は、何も考えずに賛成するか、気まぐれで反対したりすることと思います。「そもそも取締役の選任などに何ら関心ないよ」という方が大多数かと思います。
けど、その企業の業績向上、つまり株価向上に貢献するのは役員のパフォーマンスによるところが大きいのであって、個人株主もしっかりとした判断基準に基づき取締役選任をするべきと私は思います。
ここで個人株主が判断の拠り所にすべきは機関投資家の議決権行使基準です。機関投資家は、投資先企業の株式を1銘柄あたり数百万株以上を保有することもあり、また、アセットオーナーから資金を預かり運用を任されていることから、投資先企業の取締役の能力に高い関心を有しており、議決権行使も真剣に実施しています。その際の基準を個人株主も参考にする、というかその基準に従い賛否判断をするのがベストです。
では、「その基準って何?」ということですが、結論からいうと、ROEの5%未満が過去3年程度続くようであれば、その企業の経営トップや在任期間3年以上の取締役には反対すべきです。機関投資家もおおむねこの考えで賛否を判断しています。いくつかの機関投資家の基準を列挙すると次のとおりです。
ROEは株主資本コストを上回る必要があり、通常、株主資本コストは7~8%と言われていますので、ROE5%では問題では?という考えを持たれる方もいるかもしれません。これは全くその通りです。けど、現状、機関投資家も役員の選任議案ではROE8%までは要求していません。その理由は、日本企業全体としてみるとROE8%未満は多く、8%を基準にすると役員選任議案が可決されないことになるからです。
なお、個人株主の方で「私はROE8%でないと許さん」という意見もお持ちの方もいるかもしれませんが、それは間違ってはいないので、ROE8%未満の経営トップに反対しても良いとは思います。機関投資家も将来的には、ROE8%未満が数年継続する場合には反対という数値基準を引き上げる方向には向かうと思います(ただし、昨年、多くの機関投資家と会話をした限りでは、ROE8%まで引き合げるのはもう少し先かなという感覚を個人的には持っています)。