昨年12月25日公表の象印マホービン(7965)の決算短信によると定時株主総会は本年2月18日に開催が予定されています(同社は11月期決算)。
象印は、昨年は大株主の中国家電大手のギャランツの創業家が取締役選任の株主提案をし否決されています。昨年、ギャランツは象印が3期連続の減収減益に陥った要因として、象印の市川社長(オーナー社長)の在任期間が19年にわたり、影響力が強く他の取締役が独立した判断を下せていない点などを問題として指摘していました。
象印の大株主の状況を見ると2020年5月20日現在で筆頭株主はCLEARSTREAM BANKING S.Aで保有比率が13.54%となっていますが、この投資ファンドがギャランツと関係があると言われているようです。従って昨年と同様に物言う株主が筆頭株主ということです。
では、昨年から1年経過して象印の業績はどうかといいますと、2020年11月期は売上高が749億円で前年比▲5.3%、営業利益は54億円で前年比▲0.1%となっており、4期連続の減収減益です。また、経営指標については、同社のホームページに掲載されていますが、ROAとROEは次のとおりで昨年から更に低下しています。
同社の直近の有価証券報告書を見ると政策保有株式(上場株式)は37銘柄でBS計上額が4,335百万円となっています。株主資本に占める金額比率は約6%です。政策保有株式の削減が求められている世の中の動きの中において結構な数を保有していると言えます。議決権行使助言会社のグラスルイスは、純資産に占める政策保有株式の金額が10%を超える場合には経営トップへの反対推奨を方針としていますが、この基準には抵触しないようです。
2月18日開催の象印の定時株主総会の招集通知はまだ公表されていません。昨年は、象印は1月14日に「株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせ」を公表しています。この1年間で業績に大きなプラスの進展も見られないことから、今回の定時株主総会でもギャランツサイドから何らかの株主提案を受けている可能性もあるように想像します。
象印は昨年はギャランツの提案に対して、社外取締役としてサントリーホールディングスの鳥井信吾氏を迎えています。現在の象印の取締役総数は13名中、社外取締役は5名ですが、この鳥井氏以外の社外取は税理士や弁護士等で、大手企業経営の経験者は鳥井氏1名の模様です。
もし、象印は今回もギャランツから何か株主提案を受けているのであれば、他の機関投資家や個人株主を会社の味方にするには、鳥井氏を迎えてのこの1年間での事業面の進展等を説明する必要があるように思えます。鳥井氏の選任理由は、昨年の定時株主総会の招集通知によれば、「当社の企業価値向上のために、グローバルな視点での経営への関与や、客観的、中立的な立場からの経営に対する監督を行っていただくため、社外取締役候補者としています」とあります。であれば、この1年間でグローバルな視点をどう経営に反映したのか、また今後どういうことを考えているかの説明や開示が投資家の賛同を得る上で肝になるように思います。象印の定時株主総会の招集通知が公表されましたら、読んでブログで紹介したいと思います。