中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

非財務情報としてのS(社会)の中の重要情報 ー 従業員意識調査は大事です

少し前に「個人投資家が投資先企業に提案をするためのROEの実践的な使い方①」を書いていますが、この続きがまだアップできていませんので、近日中に続きを掲載する予定ですが、本日はその前に別ネタを1つ書きたいと思います。

ESG情報の中でS(社会)がありますが、この中で重要な情報は何だと思いますでしょうか? Eであれば環境ということで、企業のCO2削減への取組みが該当することは多くの方はご存じかと思います。けど、Sとなると範囲がかなり広く、何が大事であるのか、つまり、機関投資家が何を重視するのか迷われる企業の方は多いと思います。

Sの情報は色々とあると思いますが、重要情報の1つに従業員の意識調査があると私は思います。従業員の意識調査という言葉を初めて聞いた方もいるかも知れませんが、外部の専門コンサルなどを起用して、自社の従業員の意識を調査することです。この数年で実施する企業も増えていると思います。

この調査結果について近年、機関投資家は重視しています。その理由は、会社を支える基盤である従業員が企業理念、全社戦略、事業戦略をはじめ自社に対してどういう意識でいるかは企業の持続的成長において重要であるからです。

例えば、ある企業の今期の業績が好調だとします。けど、従業員意識調査の結果、従業員に不平不満が非常に多く、経営陣の非難ばかりする方が多かったらどうでしょうか?中長期の投資家としては、「この会社は2~3年後は大丈夫か?」と不安になると思います。一方、今は外部環境の影響もあり業績は芳しくないが、将来に向けての見通しが明るい従業員が多く、自社に誇りを持っている方が多いような場合、その企業の将来の成長に期待できると言えます。少し単純な事例をあげましたが、考え方としてはこういうことになります。

私は20代の頃は「企業は人なり」なんて言葉は馬鹿にしていましたが、社会人になり25年も経過すると、結局のところ、個々人の意識が企業の成長に大きな影響を与えるんだなとつくづく感じます。意識の高い社員の集団であれば、長期で見ると企業は成長する可能性が高いと私は思っています。

従業員意識調査をこれまで実施している企業であれば、調査結果は真摯に受けとめ、課題が見つかれば、その改善に取り組み、改善の結果を機関投資家とのエンゲージメントでマネジメント層の口から伝える等の取組みが大事になります。

また、個人投資家の方は投資先企業に対して、意識調査の結果等を質問するとよいでしょう。中長期での投資の継続の判断の材料の1つになると思います。