中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

企業と機関投資家の重視する経営指標に差があります - ガバナンスサーベイ2020より

三井住友信託銀行が上場企業におけるコーポレートガバナンスの対応状況の実態調査として、ガバナンスサーベイを2017年より実施しており、今回、12月4日にガバナンスサーベイ2020として調査結果を公表しました。

今回は1,664社(製造業670 社、非製造業994 社)の上場企業から回答を得ており、コーポレートガバナンスに関する調査としては、日本最大級の規模となっているとのことです。同サーベイからの結果サマリーを詳細すると次のとおりです。

■ 資本コストを把握する企業は増加傾向だが、KPI設定に課題
自社の資本コストを把握する企業は全体の 54%(前回調査比+7Pt)。中期経営計画等において主要経営指標(KPI)として資本効率性指標を設定する企業は全体の 40%に留まる一方、投資家の 85%は同指標を設定することを期待
社外取締役選任、報酬・指名(諮問)委員会の設置は一層進捗
本則市場に上場する企業のうち、56%が取締役会構成員の 1/3 以上に当たる社外取締役を選任済み。今後1/3 以上に割合を引き上げる意向がある企業を含めると、79%に達する。本則市場に上場する企業のうち、(指名委員会等設置会社を除く)任意の指名委員会・報酬委員会を設置する企業はそれぞれ55%、58%。プライム市場(仮称)への上場を志向する企業では、それぞれ 63%、67%に達する
■ 開示書類の英訳対応は一部の企業の対応に留まる
招集通知の英訳対応(一部を英訳する企業を含む)を実施する企業は全体の 39%。該当企業の 71%は、東京証券取引所における市場区分見直し後のプライム市場(仮称)への上場を志向

投資家は資本効率を経営指標に求めています。投下した資本からどの程度の利益などを企業が生み出しているかの指標で、ROEやROICなどがこれに該当します。資本コストを理解している企業は54%ということですが、残りの46%の企業はどうやって目標ROEを設定しているのでしょうか。また、目標は設定していないとしても、実績値のROEが妥当かどうかをどうやって把握しているのでしょうか。

恐らくROEの本当の意味を分かっていないのだと思います。なんとなくROEが8%あれば良いのだろうというレベルにあるのだと思います。とは言え、機関投資家(海外・国内)による株式保有比率が数パーセントしかないような企業はそもそも資本コストなど考える必要はないのかも知れません。個人株主のほとんどは資本コストを理解していないからです。

私自身も株式投資をするに当たっては、対象企業の過去10年のPL、BSをはじめPER、PBR、ネットキャッシュの程度、EV/EBITDA倍率などはエクセルできっちりと分析しますが、資本コストまでは正直意識していません。

ということで、企業の目指すべき株主構成によって資本コスト等の意識の必要度合いは異なるということになるかと思います。英文開示も同じ考えで、海外機関投資家に株式を保有して欲しいと思わない企業は作成する必要もないかと思います。出す以上はミスが出来ないので外部の業者に作成依頼するコストも結構かかります。

さて、話が変わりますが、先日、「50歳からの幸せな独立戦略」(PHPビジネス新書)を書店で購入しました。

そもそも私がこのブログを書いているのも、自分の業務に関連する知識の整理という目的の他に、遠くない将来に、株式投資、コーポレート・ガバナンス全般、機関投資家との対話(いわゆるSR(シェアホールダーズ・リレーションシップ))、買収防衛策の導入・廃止、企業買収防衛などを副業でコンサルティングとしてやって行きたいという強い思いが念頭にあります(そうは言っても勤務先が副業解禁をしないと実現が難しいところも少しありますが、まあ世の中の風潮から近いうちに解禁すると期待しています)。この書籍も副業・独立に向けて色々と興味深いことが書いてあるようで、まだ数ページしか読んでいないのですが、後日、ブログでも書籍紹介をしたいと思います。