中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

敵対的買収において社外取締役の持つべき視点

昨日の日経新聞朝刊の社説に「企業は敵対的買収から逃げず価値向上」というタイトルの次の記事が掲載されていました。

[社説]企業は敵対的買収から逃げず価値向上を: 日本経済新聞

最近は敵対的買収の案件が増えており、新聞記事にも書かれているとおり経営戦略の1つとして定着してきた感があります。数年前には考えられませんでした。この敵対的買収において企業の取締役会はどういう判断をすべきでしょうか?

買収をされると経営陣がクビになるので、自分たちを守るために、有事型の買収防衛策等で排除したいという気持ちになるでしょう。サマリーマンの夢である取締役として、自分の働く会社の中においては「偉い人」になれたわけですので、その地位を守りたいという考えも当然と言えば当然です。

しかし、取締役は会社に対して忠実義務・善管注意義務を負っており、自身のサラリーマンとしての利益よりも、委託関係にある会社(委任者)の利益を優先させるべき立場にあるのです。ここを十分に理解する必要があります。とすれば、取締役は敵対的買収についても企業価値向上の観点から判断すべきという結論になるのです。

しかし、前述のとおり社内取締役はサラリーマンの憧れのポストである取締役の地位に固執したいので、冷静な判断はまずできません。いかに敵対的買収者を排除するかという視点しか持てません。

そこで登場するのが社外取締役です。社外取締役は少数株主の利益の代表者の立場にあるのです。従って、公正中立な第三者的な立場から、敵対的買収を冷静に判断し、それが企業価値向上に資する場合には敵対的買収を促進するよう社内取締役を説得するようなことが必要になります。これが機関投資家から期待されているのです。社外取締役には独立性が必要と言われますが、それはこういった敵対的買収の際に求められるのだと思います。とすると皆さんの社外取締役の方は、こういう判断が出来る人で構成されているでしょうか?企業価値を向上できる布陣となっているか自社の取締役会の構成をあらためて考えることが大事かと思います。