中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

社外取締役からのメッセージを機関投資家は期待しています!

先日、敵対的買収における社外取締役(以下、社外取といいます)の役割について書きましたが、今回も引き続き、社外取について書きたいと思います。

その前に1つ。「ブログの文章をがかたいですね」「専門的な知識がないと難しいところが時々ある」という指摘が私のブログを見ている知り合いの方からありましたので、今回から、ブログの文章を平易かつ少し砕けた内容にします。ので、ブログをご覧になられている方で(大変ありがたいことです)、コーポレートガバナンスに関心があるが勉強を開始したばかりのお知り合いの方などがいらっしゃれば、是非ともこのブログを紹介頂ければ幸いです。話の性質上、真面目かつお堅い文章の場合もありますが、市販の本には書かれていない実務や新聞記事について、なるべく分かりやすい解説をすることを心掛けるつもりです。

さて、本題ですが、皆さんの企業では社外取との面談を求める機関投資家は増えておりますでしょうか? 「ウチはそんな声は聞いたことはない」という企業もあるかも知れませんが、この数年、社外取との面談を求める機関投資家は増えています

理由は単純で機関投資家としては、自分たち少数株主の利益の代弁者である社外取の意見を聞きたいのです。というと少し難しく聞こえますが、ひらたく言うと、会社について社外取が思うところの率直な意見を聞きたいということです。何故、社内取締役(社内取といいますね)の意見では駄目なのでしょうか?

社内取は会社からの報酬(報酬と言うとコンサルタントのようにカッコいいイメージがありますが、お給料のことです)が生活の糧ですので、自分と家族の生活を守るため、属する会社の悪口を馬鹿正直に外に言う人はいないかと思います。そもそもそういう自由人は、いくら上司にゴマをすり、出世してきたとしても、さすがに取締役にはなれないでしょう(まあ、取締役と言っても総合商社やメガバングなどのエリートが沢山いる超一流企業と、そうでない大多数の企業の取締役には色々な観点で非常に大きな開きがあるので、一概には言えませんが)。社長を除く取締役は、従業員とは法的に身分が異なりますが、所詮は、意識においては、部長クラスと同じく上司の顔色をうかがい生活をするサラリーマンに過ぎません。少し言葉は悪いですが。

自分の生殺与奪権、つまり1年でクビになるかどうかは上司である社長が握っているのですから、会社のことを投資家ごときに馬鹿正直に語った日には「こいつは駄目だ」ということで1年後にクビです。任期途中に解任すると会社のイメージが非常に悪いので、「クビ=1年の任期終了で再任されない」ということです。

なお、今の時代は社長が人事権を持つのではなく、指名委員会だという意見の方もいると思います。けど、指名委員会に社長が委員に入っている企業は多く、仮に社外取のみで委員会が構成されるとしても、会社のことを詳しく知らない社外取が取締役候補者を一から決めることなどまずあり得ず、社長がドラフトを作成して、それを指名委員会が追認するというケースが多いのではないでしょうか。これは私の想像ですが。

そこで、社外取の出番となります。社外取の出番は多いですね。会社から独立した立場で、客観的な意見が言えるわけです。つまり社長をトップとしたサラリーマン組織のピラミッドから外れた立場にあるので、バイアスがかからず率直な意見を言えるということです。また、社外取は、細かい実務をするわけではなく、中長期の戦略策定であったり、戦略の進捗をモニタリングしたり、社内取とは違う視点で意見を言うことが期待されています。そのあたりの本音を投資家は聞きたいというところかと思います。

「実は当社は戦略が弱いんだよ」「戦略の進捗管理が出来ていなくてね」といった本音を聞きたいということです。投資家が「社外取と面談させてくれ」「面談においては、社内の人は同席しないでいいから」ということになります。社内の人が出ると社外取の本音が聞けない可能性が大だからです。社外取が調子に乗って、何かヤバいことを話す様子が見て取れた時には、社内の方が「えーと、その点は私から説明いたします!」となる訳です。

けど、問題は社外取の方々は、忙しい人が多いということです(暇な人もいるのかも知れませんが)。他の仕事もあるわけですから、ちょくちょく面談が出来ないということが多いかと思います。また、忙しくなくても、社外取を面談に出すと、自由におしゃべりをされるリスクがあるとも言えます。そこで、社外取との面談に代わるのが、開示媒体、つまり統合報告書などで社外取のメッセージを発信することです。

では、どういう形式でメッセージを発信すればよいでしょうか?つまり、機関投資家が関心を持つにはどういう様式でメッセージを発信すればよいのかです。少し長くなりましたので、これは週末に書きます(本日はこれから某投資先企業のIR部門に質問のメールを書く作業に入ります)。