中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

自社株買いが株価上昇となることの初歩的な考え方

今週は仕事が多忙でブログの更新に十分な時間をかけることができないのですが、先日、社内で自社株買いの知識の雑談をした時に意外に理解していない方が多いことに気付きました(私の勤務先は金融ではなく、一般事業会社ですので、IR部門以外の方は悲しくらいに株式関連の知識がないので(50代半ばのある部長クラスの社員と話しをしても「機関投資家って何?」というほどの証券のど素人も多く)、自社株買いの知識がゼロなのも仕方ないところではありますが。

自社株買いは一時的であるにせよ株価が上がると一般的には言われています。私の保有銘柄で少し前に自社株買いを発表したところもあり、本日は雑談的な話になりますが、自社株買いで株価が上がることの初歩的な知識について触れてみたいと思います。

まず1つ目は、EPS(1株当たり当期純利益)の向上に伴う株価の上昇です。自社株買いをすると市場で流通する発行済株式数が減少します。とすると、EPS(=当期純利益÷発行済株式数)が増加します。EPSを使った指標にはPER(株価収益率)があるかと思います。「PER=株価÷EPS」ですね。EPSが増加した後でもPERを一定とした場合、分子である株価が上昇することになるというわけです。

2つ目は、ROEの改善です。自社株が増えるということは株主資本にはマイナス要因になります。とすると「ROE=当期純利益÷株主資本」ですので、分母の株主資本が減るのでROEが向上しますよね。ROEが向上することは株価にプラス材料と言われています。

3つ目に市場で買いオーダーが積み上がるので、買い需要が生まれて株の需給が改善されるということです。

4つ目にシグナリング効果です。自社の内情を社外者よりはるかに詳しい経営陣が自社株買いをすることは、自社の株価が安いと思っていることの証拠ということです。このため割安であるなら株を買おうという人が出て株価が上がるということです。

自社株買いを公表しても、一時的に株価が上がることで終わることも多く、中長期投資では継続的に株価上昇に寄与するというものではないと思います。やはり、株価は業績に収斂されるのが基本かとは思います。ということで自社株買いの実務に精通している方にはあまりに初歩的な知識かも知れませんが、紹介いたしました。