先日の日本経済新聞の記事に株主資本配当率(DOE)の記事が出ていました。DOEとは、Dividend on equityの略で、次のとおり算出されます。
DOE=配当金額 ÷ 当期末の株主資本
配当に関する指標には、配当性向があります。良く耳にする言葉かと思います。
配当性向は、配当金額 ÷ 当期純利益(%)です。つまり、会社が1年間で儲けたお金(当期純利益)からどれだけ配当金として株主に還元されるかを示す指標です。配当方針として、「配当性向20%以上」「配当性向30%以上」といったことを公表する企業も多いと思います。
新聞報道によれば、配当性向を目安にする企業は、純利益が減ると連動して減配となる可能性があると書いてあります。
これはどういうことかといいますと、仮にある企業が配当性向30%を公表しています。この企業の今期の純利益が100とした場合、配当金額は30(=100×30%)となります。しかし、来期は、当期純利益が50と減益になった場合、配当金額は15(=50×30%)となり減ることになります。配当金額を発行済株式数で割ることで1株当たり配当金額となりますが、配当総額が減ることで減配となります。
一方、DOEは、利益を積み上げた株主資本に対してどの程度を配当に回すかを示す指標で、株主資本は変動は少ないため、より安定的に株主に還元する姿勢を市場に示すことができるとされています。
新聞報道では、資生堂、ファンケル、JAJがDOEを基準にしているとのことでしたので、インターネットで「資生堂 DOE」といったキーワード検索をしたところ、次のような内容が開示されていました。
資生堂:DOE 2.5%以上を目安とした長期安定・継続増配
ファンケル:連結配当性向40%程度及びDOE5%程度を目途に配当金額を決定
JAL:配当性向 親会社株主に帰属する当期純利益から法人税等調整額の影響を除いた額の30%程度を目安とし、DOEは 維持すべき株主資本利益率(ROE)の水準10%と上述の配当性向を勘案し、3%以上となるように努める
こういった開示を市場は評価し、資生堂、ファンケルともに株価が上がったとのことのようです。
ところで、話は変わりますが、配当性向を20%又は30%といった数値基準を掲げる企業もありますが、それで本当に十分なのでしょうか。
配当の原資は、基本的にバランスシートの株主資本の部にある繰越利益剰余金になります。正確には、繰越利益剰余金が100あっても現金が50しかないと現実には50しか配当出来ませんので(借入をして配当原資を増やすということも一応ありますが)、繰越利益剰余金の金額を上限として、その上で更にバランスシート上の現預金を上限とする範囲で配当が出来るということかと思います。
個人株主は、素人ですから、自分の投資先企業が配当性向30%で安定配当をしているということで満足している方も多いと思いますが、バランスシートを見て、配当の余力はもっとあるのではないかと疑って見る必要があります。
企業が使わないキャッシュを溜め込んでいるのであれば、つまりM&Aや設備投資でキャッシュを使う具体的な予定がないのであれば、株主はそれは還元せよといえる権利があります。
最近、2018年3月期決算企業の決算の発表が続き、個人的な株式投資の目的で、週末に自宅で四季報オンラインで、低PBR、ネットキャッシュ大、外国人株主比率が10%超などの一定の基準で中小型銘柄のスクリーニングをしているのですが、明確な配当方針やキャッシュの使途の公表もないままキャッシュをかなり溜め込んでいる企業がこの規模の企業では散見されます。要するに、上場していながらも、コーポレートガバナンスの意識が低い企業ということです。
こういった中小型銘柄の企業は、個人株主もしっかりと理論武装をすれば、株主としての権利を行使できるネタが沢山あると最近つくづく感じています。