中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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株主還元方針は配当性向ではなくDOEが今後の主流になるでしょう

4月24日の日経新聞アステラス製薬の株価低迷について、製薬大手が重視する株主資本配当率(DOE)で比較すると、配当性向で見劣りしていることがアステラス株の上値を抑える一因になっているという記事がありました。

DOEについて本日は簡単に説明したいと思います。製薬業界ではDOEが定着しているようですが、製薬業界以外でも最近DOEを掲げる企業も増えています。

DOE=配当総額÷株主資本=ROE×配当性向で算出されます。なお、ROE=売上高当期純利益率×総資産回転率×財務レバレッジです。

配当性向は、配当金額 ÷当期純利益 (%)で、会社が1年間で儲けたお金(当期純利益)からどれだけ配当として株主に還元されるかを示す指標で、配当方針として「配当性向20%以上」「配当性向30%以上」といったことを公表する企業も多いと思います。しかし、配当性向の問題は、分母である当期純利益は毎年の変動幅が大きく、結果配当性向は毎年大きくブレるという点にあります。1年間の配当総額に変更がなくても、当期純利益が減少すると配当性向は大きく増えたります。

DOEは、利益を積み上げた株主資本に対してどの程度を配当に回すかを示す指標で、株主資本は変動は少ないため、より安定的に株主に還元する姿勢を市場に示すことができるとされています。

第一三共の先日公表した中期経営計画では、「株主還元のKPIとしてDOEを採用し、2025年度時点で8%以上を目標とする」と書かれています。1年ほど前に調べた時は、資生堂ファンケル、JALなどがDOEを基準にしていたかと思います。DOEを強く意識している企業はまだまだ少ないと思いますが、今後はこれが主流になっていくと思います。