10月28日の日経新聞に掲載されていましたが、香港の投資ファンドのオアシス・マネジメントが北越コーポレーションに対して大王製紙株の売却要請をしているとのことです。オアシスの提案書は次のとおりとなります。
大王製紙の政策保有株式の売却のほかに、次なる中核事業としてのバイオマス発電への投資なども要請しているようですね。提案内容として以下が記載されています。
- 次の成長ドライバーとしてのバイオマス発電事業への投資(バイオマス発電所は北越の成長ドライバーとなる)
- 既存の製紙事業のコスト構造改善とパッケージ事業への注力(紙パルプ事業のコスト見直し、 プラスチックの代替としての紙パッケージング業界における競争力の強化、 東南アジアにおけるパッケージング事業は成長ドライバーとなりうる
- ROEの改善およびバランスシートの効率化(政策保有株式の売却(大王株式を含む)、北越は競合他社と同様のクレジット・レシオを用いればROE7.2%の達成が可能、 社債の発行、 自己株式の取得)
- コーポレート・ガバナンスの改善-今こそ変革の時( 13年間CEOをつとめた岸本氏の後継者育成、 取締役会の多様性・独立性の向上(現状は女性ゼロ)、 買収防衛策の廃止、 株式報酬割合の増加)
事業面についてかなり踏み込んだ分析をしている印象を受けます。恐らくどこかの投資銀行または戦略コンサルティング会社も起用して作成しているのだと思います。ESGなどにも踏み込んだ提案をしているようにも見えます。
また、北越コーポのCEOの岸本氏と言う方を徹底して批判しているのも興味深いですね。「岸本氏は自身のワンマン体制を維持するため、他のすべての取締役を解任してきた」という記載もあります。この文面だけを見ると、この岸本という方は「どういう人なの?」という興味がわいてきます。
製紙メーカー各社はこの提案書をしっかりと読んだ方がよいかと思います。オアシスが業界再編を提案するようなことになった場合、他の製紙メーカーの株式も取得して、北越コーポとの提携等も提案することも可能性としてはあるかと思います。
また、この提案書を読んで他のアクティビストが他の製紙メーカーに同様の提案をする可能性もあると思います。そういう可能性を考えると、製紙メーカー各社はこの提案書を読んで、自社に同じような提案があったらどう反論するか、どう対応するかを分析しておくことが重要です。
しかし、オアシスは電気興業、北越コーポともに事前警告型の買収防衛策を有している企業に果敢に攻めていますね。大量の株式を買増して買収防衛策の効力を争うのか、それとも株式取得は20%を下回る比率にとどめて、合理性のある提案をして、他の機関投資家の賛同を求めるの狙いがあるのでしょう。恐らく後者の狙いかとは想像しますが、今後が興味深いところです。