中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

上場企業が物言う株主から自社を守るための武器(第5回) - プライム市場の企業の社外取締役の構成比(その1)

このタイトルの記事を久しぶりに書きます。コーポレートガバナンス・コードの6月改訂の目玉の1つは、取締役会の機能強化でプライム市場の企業に社外取締役の割合増が求められたことです。「原則4-8.独立社外取締役の有効な活用」の次の箇所です。

独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、プライム市場上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも3分の1(その他の市場の上場会社においては2名)以上選任すべきである。また、上記にかかわらず、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、過半数の独立社外取締役を選任することが必要と考えるプライム市場上場会社(その他の市場の上場会社においては少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社)は、十分な人数の独立社外取締役を選任すべきである。

この規定は重要です。まずプライム市場で3分1以上の割合を充たしていない企業は、その理由の説明を求められることになります。コーポレートガバナンス・コードはコンプライ or エクスプレインです。物言う株主は、投資先企業の経営陣に入ることを要求するケースが多いですが、このコーポレートガバナンス・コードの規定を根拠に社外取締役候補者の選定を株主提案として求めてくることが考えられます。

けど、そうはいっても企業側としては、社外取締役を増やすのは簡単ではないでよね。社外取締役には一定の報酬を払う必要があるわけですし、社外取締役は思ったほど役に立っていないケースもかなりあるところ、社外取締役の中には、空気が読めず、やたら頑張ってしまい会社の経営をかき乱す迷惑な方もいると思います。ということを考えると、社外取締役の員数を増やすということは躊躇するところかと思います。

ではどうすればよいでしょうか? 答えはシンプルです、社内取締役の員数を減らせばよいのです。そもそも取締役といっても員数が多い会社の場合には、役職のない「ヒラ」の取締役などは、部長程度の権限しかなく、会社法上の役員の地位を与える必要がない場合も多いと思います。であれば、取締役を退任させて、かわりに「常務執行役員」あたりの役職を与えておけばよいのだと思います。実務上はそれで何の支障もないかと思います。本人も取締役だと会社法上の任務懈怠責任等を問われる可能性もありますが、執行役員であればそのリスクはゼロであり、役員という名称がついている以上は世間体を気にする必要もないかと思います。このように社内取締役の員数を減らせばよいのですが、色々と社内事情もあり、結果、社外取締役3分の1以上を充足できない場合、プライム市場の企業はどうすればよいでしょうか? 

それはこの「原則4-8.独立社外取締役の有効な活用」の趣旨に照らした対応を事前にしておけばよいのだと思いますが、これは次回記事を書きたいと思います。夏休み休暇のため明日から2、3日間自宅を離れるため、次回は8月9日週の半ば頃にアップデート予定です。