中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

自動車部品サプライヤーとEV化 ー 日本ピストンリング(6461)の有報(2021年3月期)での開示内容

以前に自動車部品サプライヤーについて次の記事を掲載しました。私の投資先銘柄の中でEV化により影響を受ける可能性のある銘柄があり、中長期での動向を探るべく、まずはEV化でエンジンが不要になったと仮定した場合、大きな影響があると言われている自動車部品サプライヤーの動向を開示資料から分析しています。

この中で、ピストンリングメーカーの日本ピストンリングが昨日、2020年度の有価証券報告書を開示しました。この中に「対処すべき課題」という箇所があり、ここは各企業が今後取り組むべき重要な経営課題について記載する箇所ですが、「エンジンの進化への対応」として次の記載があります。

各自動車メーカーは、燃費効率や環境性能の向上、車体の軽量化を図り、CO2削減をすすめ、地球環境に優しいエンジンへの進化に取り組んでおります。電動化が低炭素社会実現の決め手のように言われる場合がありますが、エンジンもまた、電気自動車のエネルギー源である発電に対し、それを上回るCO2排出量削減の実績を示すことができれば環境負荷低減への有力な手段となるものであり、その大きな目標は達成されつつあるものと認識しております。低炭素社会の実現にエンジンが貢献するためには、エンジンの高熱効率化やクリーン化が必要となります。当グループは、その条件を満たす耐摩耗性、耐久性等に優れた高機能自動車部品を生み出す技術開発をすすめてまいります。また、高精度かつ国際価格競争力のある量産の実現も重要な要素であり、引き続き注力してまいります。加えて、技術提案型営業や開発機能の現地化に取り組んでおり、欧米メーカーや中国ローカルメーカーへの拡販等の成果が現れてきております。今後ともエンジンの深化に貢献し、価格・品質両面で評価を受ける製品の供給に努めてまいります。

太字でハイライトしたようにエンジンでも環境負荷に貢献できるよう取り組みを進めるようですね。

また、有報には「事業等のリスク」の箇所もありますが、そこでは内燃機関搭載車市場の縮小によるリスク」として、次のように記載されています。

今日は、CASEに代表される100年に1度の自動車事業の変革期にあると言われていますが、環境問題やエネルギー問題に対する社会的意識の高まり等から、電気自動車等、内燃機関を使用しない自動車が生産・販売され、その数は増加傾向にあります。電気自動車は、コストや利便性等の面で、まだ課題が多いとも言われておりますが、課題解決へ向けた進展や強い政治的なサポート等により、内燃機関搭載車市場が大きく縮小する程度まで電気自動車等のシェアが伸長する、そしてその時期が早まる可能性があり、その場合には、受注減少を通じて、業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性がございます。このような市場の方向性につきましては、シナリオ動向の不確実性に加え、社会的目標は飽くまで環境負荷低減であり、電気自動車の導入は一つの手段であるという見方が本質であると考えることから、現状において経営を全面的に方向転換することは寧ろリスクを拡大する可能性があるものとも考えられます。当グループといたしましては、コア技術を背景とした差別化や顧客との適切な連携により、「顧客に選ばれる製品・サービス」を供給することで、内燃機関環境負荷低減に対し責任を持った対応を行うとともに、総量が例え減少する場合でも優位なシェアを確保して行く方針であります。また、内燃機関関連製品に関する設備投資につきましては、費用対効果を吟味し、適正かつ選別的に行ってまいります。

目的は環境負荷の低減であり、これはEV化ではなく、当面は内燃機関であるエンジン搭載でも目的を達成するという強い意気込みが伺えます。

経済産業省が2018年4月に公表した資料では、エンジン搭載車は2030年は91%で、2040年に84%という予測をしていますが(この点も前に書いた記事を西再掲します)、その後に政府の脱炭素化に向けた方針も大きく転換されたので、今後の動向は注視する必要があります。