本日はゼネコンの政策保有株式の縮減状況について書いてみたいと思います。
次のとおり、少し前にブログでゼネコンがアクティビストに狙われていることを書きました。ゼネコンはキャッシュリッチであるためアクティビストにとって「絶好のカモ」にされているわけですが、大手ゼネコン各社の政策保有株式数を2018年度と2019年度の各社の有価証券報告書(有報)で調べてみました(昨夜は友人と久々の飲み会があり、少しだけ酔った後に家でPCを開いて調べたのですが、まあ数値に誤りはないと思います)。
有報の「保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式」の中の「非上場株式以外の株式」(=上場株式)です。前者が2018年度の銘柄数、後者が2019年度の銘柄数になります(括弧は増減数になります)。
- 大林組 149銘柄 → 129銘柄 (△20銘柄)
- 大成建設 141銘柄 → 139銘柄 (△ 2銘柄)
- 清水建設 180銘柄 → 174銘柄 (△ 6銘柄)
- 鹿島 167銘柄 → 161銘柄 (△ 6銘柄)
- 戸田建設 118銘柄 → 118銘柄 (増減なし)
- 西松建設 75銘柄 → 64銘柄 (△11銘柄)
- 安藤ハザマ 58銘柄 → 51銘柄 (△ 7銘柄)
- 五洋建設 50銘柄 → 33銘柄 (△17銘柄)
- 熊谷組 11銘柄 → 11銘柄 (増減なし)
- 長谷工 6銘柄 → 6銘柄 (増減なし)
いかがでしょうか。コーポレートガバナンス・コードで政策保有株式の縮減が求められている中、依然として保有銘柄数がかなり多い状態になっています。2018年度から縮減を進めているゼネコンが多いですが、保有する絶対数は依然としてかなり多いと言えます。
政策保有株式=余剰資金ですので、アクティビストとしては、政策保有株式は売却して現金にして株主に還元せよと主張するわけです。アクティビストの主張は極めて合理的であり、資本市場関係者から見ても至極もっともな主張と言えます。
ゼネコン業界は、失礼ながらバリバリのドメスティックな「ザ・ジャパニーズ企業」と言えるので、今だに政策保有株式を持つことが取引の大前提であるという慣習があるのだと想像します。
戸田建設などはシルチェスターに狙われていますので、買収防衛策も本年継続更新し、安定株主比率を高めるべく、政策保有株式の削減が出来ていないのだと思います。自社が保有する政策保有株式売却すると、「お宅が売るならうちも売りますよ」ということで相手も自社の株式を売るので、結果、自社の安定株主が減るということになります。
ゼネコン各社は、同業の政策保有株式状況はウォッチしていると思います。同業の縮減があまり進んでいないと自社の縮減も「まあこの程度でいいや」ということになるのですが(「右へ倣え」の精神です)、同業だけでなく、資本市場の動きに目を向ける必要があります。
コーポレートガバナンス・コードの改訂に向けた議論が始まっていますが、今度の改訂では政策保有株式についても更に一歩踏み込んだ話に発展するのだと思います。アクティビストはコーポレートガバナンス・コードの内容は自分たちの主張を正当化する材料にしているので、ゼネコンの担当者もしっかり改訂の議論の進捗を見た方がよいと思います。