中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

島忠の争奪戦 - 旧村上系ファンドが関与して面白くなってきました

ホームセンターの島忠に対してDCMホールディングがTOBの最中ですが、これに対して、家具大手のニトリが島忠をTOBする意向との報道が先日ありました。この報道に対して、ニトリは10月21日付で「決定した事実はない」旨のプレスリリースを出しています。

その内容は、「当社は、当社のロマンと中長期ビジョンの達成に向けた経営戦略を策定しており、その一環として、株式会社島忠も含め、M&Aを通じた成長の可能性を日々検討していますが、現時点で決定している事実はございません。」というものです。「当社のロマン」という表現が興味深いですね。プレスリリースではあまり見ない言葉ですが、オーナー社長であるがゆえに言える言葉ですね。オーナーならではの思いがつまっている言葉かと思います。

さて、今回のニトリTOB意向に関連して出てきたのが旧村上系ファンドのシティインデックスイレブンズです金儲けのチャンスと見るや即座に行動をしてくるあたりがさすがプロフェッショナルです。シティインデックスが10月21日付で「株式会社島忠について」という書面を公表しています。それには次のような内容が書かれています。

  • DCMによる島忠株式に対する公開買付けに関する島忠の意見表明報告書には、島忠がDCM 以外に広く買い手を募り島忠の株主価値の最大化を模索した旨の記載がなく、この点について非常に疑問に思っている
  • 島忠の取締役会及び特別委員会は、島忠の全ての株主に対して最も高い株主価値を実現する義務がある。島忠の取締役会及び特別委員会において島忠の買い手候補を広く募った上で、その中からベストプライスを追求すべきである。一旦、売りに出されてFor Sale となった会社は、それ以外の選択肢はないはず

いかにももっともらしいことが書かれていますが、島忠はビット方式でより高いTOB価格を提示する会社に買収されるべきであり、ニトリがDCMより高い値段を提示するのであれば、島忠はニトリTOBに賛成すべきであるということをいっています。

結果、村上ファンドは、これに応募すればより高い儲けが得られるということです。まるでニトリと旧村上ファンドが裏で通じあって連携しているようにも見えます。勿論そんなことはないですが。

DCMのTOBは1株4,200円で期間は10月5日から11月16日となっていますが、本日現在においては、ニトリTOBを公表しておりません。

ニトリが島忠にTOBを行った場合、TOBが成功するか否かは、島忠の株主構成を見る必要があります。島忠は8月期決算ですので、2020年8月末の株主構成はまだ有報で公表されていませんが、直近の有価証券報告書での株主構成(2019年8月末時点)では、外国人:37.3%、金融機関:29.2%、個人:23.2%です。金融機関は、商業銀行と国内機関投資家に分かれますがこの内訳は不明です。

ニトリがDCMより高いTOB価格を提示した場合、外国人と個人はこれに応じるように思います。島忠の本日の株価終値は4,745円です。ニトリTOBは11月頃には公表されるように思いますので、島忠の株主の方はウォッチする必要があります。