中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

上場子会社の在り方に関する最近の動き

2019年も終わりましたが、新年最初のブログは上場子会社について整理したいと思います。

昭和電工が日立化成を完全子会社化するとともに、日立化成の事業ポートフォリオの選別も進めると昨年の新聞報道でありました。今後は、上場子会社の上場廃止は増えるのだと確信しておりますが、本日は、上場子会社の在り方に関して、直近の動きを紹介したいと思います。

2019年11月29日に、東証が「上場子会社のガバナンスの向上等に関する上場制度の整備について」を公表しました。この中では、次の事項が規定されています。

  1. 独立役員の独立性基準の強化 ⇒ 独立役員の独立性に係る判断基準に、過去10年以内に親会社又は兄弟会社に所属していた者でない旨が追加
  2. グループ経営の考え方等の開示の充実 ⇒ 上場子会社を有する上場会社は、グループ経営に関する考え方及び方針を踏まえた上場子会社を有する意義及び上場子会社のガバナンス体制の実効性確保に関する方策などを、コーポレート・ガバナンスに関する報告書において開示すること

2が面倒ですよね。上場子会社を持つ意義については、上場子会社毎に開示することになっているようです。

前にもブログにも書きましたが、上場子会社を持つ意義について、上場親会社に東証がアンケートをとったところ、社員の士気向上のためのようなことが一番の理由にあげられていましたが、これでは機関投資家を納得させられないでしょう。

機関投資家(運用会社のことです)のほとんどは非上場ですが、社員の士気が下がっているとは私は感じません。それは、彼らは資金運用のプロフェッショナルとの自負があるからではないでしょうか。

金融のプロである彼らから見た場合、「上場することが社員の士気向上につながるのです」という理由は思いっきり笑われます。「上場廃止=社員の士気が低下」というのは、人生の40年以上を1つの会社で過ごし、そこでの人脈が自分の何よりの財産として考えている典型的な一般事業会社のサラリーマンがイメージされます。副業解禁により、自分の専門能力を高めよという世の中の動きにも逆行することと思います。

さて、この他に11月29日に東証は「従属上場子会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会の設置要綱」を公表しました。

実質的な支配力を持つ株主(「支配的な株主」)を有する上場会社(「従属上場会社」)を巡る最近の事例が示唆する問題点、支配的な株主と従属上場会社の少数株主との間の利害調整の在り方、少数株主保護の枠組み等について議論を行うため、学識経験者、上場会社及び投資家が参加する研究会を設置しています。この研究会の開催はまだのようですが、今後、注視したいと思います。

外国人株主(=海外機関投資家)比率の高い上場親会社などは、コーポレートガバナンスにしっかりと対応していかないと投資家から指摘されるので、上場子会社について非上場化(TOBによる完全子会社化等)を真剣に検討しているはずです。