コクヨがぺんてるに対する敵対的買収を開始したことは報道のとおりですが、11月20日にコクヨが公開買付価格を3,750円に変更しました。
この背景は、プラスが名乗りをあげてきたことによるものですが、コクヨのプレスリリースに買付条件の変更の理由が次のとおり記載されています。以下はプレスリリースからの一部抜粋になります。
「プラス株式会社が設立したコンソーシアムによるぺんてる株式の買い増しが行われた場合には、ぺんてるの株主として競合する大株主が存在することとなり、当社とぺんてるとの間での業務提携契約の締結に向けた協議が進まないことによってメリット・シナジーが創出されないという一般的なデメリットが存在致します。また、複雑な利害関係となることにより、ぺんてるの企業活動が阻害され、ぺんてるの業績に予期せぬ悪影響が生じることで、ぺんてる株式を保有する当社以外の株主の皆様だけでなくぺんてるのすべてのステークホルダーの皆様の共同利益にも回復しがたい損害が発生する蓋然性が相当程度高いと判断致しました。さらには、ぺんてる経営陣がこのような事態を自ら招いたことを重く受け止めており、自己保身を優先してこのような不合理的な意思決定を行うぺんてる経営陣とは、ぺんてるの企業価値の向上に一緒に取り組んでいくことはできないと考えております。今回の買い付け価格の引き上げは、ぺんてるのすべてのステークホルダーの共同利益を守るための投資であり、当社としての、ぺんてるの企業価値向上に対するコミットメントです。ステークホルダーの皆様が長年にわたり支えてこられたぺんてるブランドをさらに発展させ、当社とぺんてるがともに文具メーカーにおけるグローバル・トッププレーヤーへと飛躍できるよう、当社が責任をもって取り組んでまいる所存です。」
正直なところ、だらだらと書いてあり、何を言っているのか分からない文章ですね。
恐らくどこかの大手法律事務所が作った文章なのだろうと想像しますが、要するに、ぺんてるの経営自陣とは企業価値向上には一緒には取り組めないと書いてある中にあってぺんてるを支配したいというのは、経営陣を入れ替えて、コクヨの経営陣が経営していくしかないということを遠回しに言っているように私は解釈します。ただし、これを露骨にいうと世間の批判を浴びるので、意味不明の表現を散りばめたのでしょう。
11月23日の日経新聞にぺんてるの社長のコメントがありました。コクヨとの信頼がなく、コクヨの文化がペンテルの文化とあわないとあります。文化が合わないというのは、大問題であり、ぺんてるの社長とコクヨは仲良くできそうにないですね。
一方、コクヨはと言えば、知名度はあっても、しょせんは文具メーカーであり、上場企業の中にあっても売上高3,000億円程度の中規模クラスの中堅企業であり、かつ、海外売上高も10%程度のドメスティックな会社です。ぺんてるの海外販路を手に入れたいというのが狙いの1つにあるようです。
ぺんてるの株式は上場していないので、通常であれば株主は売却が容易には出来ません。つまり流動性のない株式です。私がぺんてるの株主であったら、簡単に売れない株式を保有し続けるより、この千載一遇のチャンスに喜んで売却するのですが(3,750円は適正価格にプレミアムがのっていると想像)、ぺんてるの株式を有する元同社のサラリーマンOBの方などがどう動くのか関心あるところです。また、ぺんてるとしては、売らないようにどのように説得するのでしょうか。
ところで、細かい話ですが、コクヨのプレスリリースには、本件の問い合わせ先として土日祝日を含めて朝9時から夜9時まで対応窓口として2名の社員の名前が書いてありました。平日の対応が夜9時は分かるのですが、土日祝日も夜9時まで対応するのですね。
高額の給料を貰っている外資の投資銀行マンであれば別ですが、メーカーのサラリーマンがそこまで頑張らなくてもよいのではないかなと思ったりしてしまいました。
色々と本件は面白いので、引き続きウォッチしていきたいと思います。