中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

サンケン電気(6707)がTOBに対して中立意見を公表

アクティビストのエフィシモ・キャピタルがサンケン電気(6707)にTOBを実施していることについて、2月9日に次のとおり記事を書きました。

エフィシモは10%のサンケン電気株を有しているところ、プラス20%の取得を目指してTOBを実施していますが、本日、サンケン電気はこのTOBに対して、中立の意見を公表しました。

その理由として、「当社として賛同することは適切でないと考えているものの、反対することが当社従業員や取引先等のステークホルダーに与える影響と公開買付者グループによる経営への影響の急迫性の程度を比較衡量し総合的に検討した結果、本公開買付けに対して中立の立場をとること、及び、本公開買付けの公表後の当社株式の市場株価が本公開買付けの買付け等の価格を上回って推移していること」を理由にあげています。

エフィシモは2月8日に1株5,205円でのTOBを公表しましたが、その後、サンケン電気の株価は上昇し、本日の終値は5,550円とTOB価格を大きく上回っています。従い、このTOBに応じるものはいないであろうということで中立の意見表明となっているということです。野村證券が2月19日にサンケン電気株の大量保有報告書を提出しており、それまで保有株数はゼロでしたが、7.20%を保有するに至っています。取得株数は1,806,357株です。プレスリリースでは中立とした理由がいくつかあげられていますが、その中の1つに次のような記載があります。

第三に、当社は、上記各理由から本公開買付けに対して反対の意見を表明することも検討しましたが、それと同時に、本公開買付け後も大株主にとどまる公開買付者グループとの関係が非友好的になることによって、本業以外の理由で社会の注目を集め、当社の従業員のモチベーションが低下したり取引先との契約交渉等において当社の経営リスクが問題視され契約条件の変更を求められるおそれ等、反対することが当社のステークホルダーに与える影響も十分に考慮すべきであると考えるに至りました。他方で、後記のとおり、当社はエフィッシモに対して純投資目的に沿った活動を行うことに関する確約を要請し、エフィッシモが一定程度協議に応じる姿勢を示していることを踏まえ、公開買付者グループによる経営への影響の急迫性の程度も勘案し総合的に検討した結果、本公開買付けに反対の意見を表明することにより、いたずらに当社のステークホルダーの不安をあおるのは、当社の円滑な事業運営ひいては企業価値の向上及び株主共同の利益の確保の観点からみて避けるべきであり、本公開買付けに対して中立の立場をとるべきであると判断いたしました。

従業員等ステークホルダーに影響を考えると反対はできなかったということが書かれていますが、要するに市場株価が上がっているから反対までしなくても、TOBに応じるものはいないであろうということなのだと思います。TOB期間は、2月9日から3月24日までの30営業日ですが、素朴な疑問としてサンケン電気の株価がこの間にTOB価格を大きく下回ったらどうなるのでしょうか。その場合にはTOB価格の方が高いから賛成意見となるのでしょうか。