中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

東証の上場市場再編の検討が再開

先日の日本経済新聞で「東証、上場市場再編へ」との記事があり、金融庁が上場市場再編の検討を開始したということです。

上場問題は当初は東証が検討していたが、事情により金融庁が引き受けることになったものの(要するに利害関係者から様々な意見があり東証が纏めることができなかったのでしょう)、年金問題金融庁の検討が遅れていたが再開したということです。

 新聞には書いてありませんが、10月2日に金融審議会「市場構造専門グループ」の第3回が開催され、これが再開しています。会議資料は金融庁のホームページで公表されていますが、再編に関する時価総額の中小型企業への意見聴取がなされたようです。対象企業は、北の達人、タキヒヨー、ハートオブコーポレーションなど時価総額が小さい会社です。

資料を全てみたわけではありませんが、各社の理由は、「頑張って東証1部になったのに時価総額基準をベースに東証2部に降格させられるのは、なんとかご勘弁下さい」ということかと思います。

東証1部の上場基準は、最低の株式時価総額は250億円ですが、東証2部から移行する場合には最低株式時価総額は40億円となり一気にハードルが下がります。2018年12月時点の株価では、東証1部の中、時価総額100億-500億円が39%、100億円以下が13%というデータを見たことがあります。

東証1部の上場の理由は、多くの中小型銘柄企業では、市場での資金調達ではなく、従業員や役員がサラリーマン生活を送る上でのインセンティブと言われています。

しかし、上場の意義は、資本市場からの資金調達です。資金調達が容易にできるということは、その会社の株式が市場で容易に売却できることが前提にあり、市場で容易に売却できる、つまり買い手が見つかるには、その会社の株価が魅力的であることが条件です。

PBRが1倍も切っており、かつ現実にも資金調達をしたこともないような企業は、本来は上場の意味はないのであり、そういう企業は中小型銘柄に多いかと思います。

上場していることの大きなコストは、決算対応のための人員です。上場していると経理(四半期決算業務)、IR部門、総務部・法務部の株主総会担当等のコストがかなりかかります。

これは時価総額数千億の企業も、時価総額100億円の企業もコストには大差ないはずです。これらの人員のコストを維持してまで上場する意義を資本市場にきちんと説明できないのであれば、上場の意義はあるのか疑問がつくことになります。

上場することで優秀な学生を採用できるということも時折耳にしますが、株式時価総額250億円以下の企業は、基本的に世間では無名の企業がほとんどであり、企業ブランドも乏しく、企業の規模感も小さいため、まずそもそも偏差値の高い上位の大学の学生は新卒では入らないように思えます。

当初、250億円を東証1部の基準にする方向で見直すということでしたが、この点も今後1から検討することになるのかも知れないという新聞の報道でしたが、今後も注視していきたいと思います。