中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

企業買収における行動指針 ー 買収防衛策の導入が厳しいのはどんな会社?厳しい中でも導入する際のポイントは?

本日、四季報秋号のデータが更新されましたね。本日は、仕事の合間とランチタイムに保有銘柄と関心銘柄の四季報情報をチェックする一日になります。

さて、前回の続きになります。前回、買収防衛策として有事型買収防衛策の導入があるということを説明しましたが、この有事型は簡単に導入できるのでしょうか?

この1~2年でもいくつか導入の事例がありましたが、手続面について行動指針ではどのように記載がされているのか、また、そもそも実質面でどういう企業は導入が難しいのかなどについてNoteに記事を書きました。ご関心のある方はご覧頂ければ幸いです。

複数の事業セグメントを持つ上場企業の簡易的な理論株価の算出 ー 投資銀行でなくても出来る簡易的な株価算定(バリュエーション)の方法です

本日の夜はラグビーの日本対チリ戦ですね。今夜はビールを飲みながらテレビ観戦をする予定で、今から楽しみです。

さて、数年前にもはてなブログで記事を書いたことがありますが、複数の事業を営む企業の株価が安いか高いかの判断について、今回、Noteの方に記事を書きました。

PBRが1倍割れであれば株価が低いと言えるのですが、市場株価と理論株価の乖離を見るための手法です。理論株価の算定は、様々な手法がありどれが正しいということはないのですが(DCF法も結構テキトーですので)、1つの考え方の参考にしていただければと思います。

「企業買収における行動指針」ー経産省が策定・公表しました

これまでブログでも複数回、進捗の記事を書いてきましたが、経産省ガイドラインを策定・公表しました。

同意なき買収があった際の対象会社の取締役・取締役会の行動の在り方等が規定されています。今は、機関投資家も資本の論理を重視する時代ですので、同意なき買収も確実に増えると思います。

経産省庁が考える買収のメリット等も今回のガイドラインに盛り込まれています。Noteの方に記事を書いておりますので、ご関心のある方はご覧頂ければ幸いです。

note.com

機関投資家の考えるROE基準 ー 堪忍袋の緒が切れる基準と不機嫌になる基準は?

昨日は投資先銘柄の買い増し検討のため、開示資料と周辺情報の整理をしました。あとは読書と水泳です。読書は、最近、中古をアマゾンで購入しているのですが、なかなか読めていませんでしたが、参考になったと感じた本はツイッターやNoteでも紹介したいと思います。

さて、ROEについて、機関投資家が「堪忍袋の緒が切れる水準」と、「そこまでは至らないが不機嫌になる水準」について、少し前にNoteに記事を掲載しました。

これはあくまで機関投資家が考える基準ですが、日本の株式市場でのスタンダードとも言えますので、個人投資家・個人株主の方も、この基準をベースに投資先企業を見たり、意見や質問を提示したらよいかなと思います。ご関心のある方はご覧頂ければと思います。

ROEが低いと企業にはこんなリスクが生じます ー シンプルですが大事なことです

本日は1日休みを頂いています。一定日数の最低限の年休取得が勤務先から言われており、消化のための休みです。午前中はこれからプールで1時間程度泳ぎ、午後は保有銘柄のこの1週間の情報整理、仕事関係の業務の資料読み込み、読書といった予定です。

さて、最近、複数の機関投資家と対話をしていますが(いわゆるSR対話)、やはりROEの関心は非常に高いですね。というか益々ROE向上の要請が強まっている気がします。PBRの構成要素ですから、致し方ないところではありますが。

では、ROEが低いと企業にはどんなリスクが生じるでしょうか?

銀行、証券会社以外の一般の事業会社に勤務する方は、意外に分かっていない方も多いのではないでしょうか?ということで、昨日、Noteの記事を更新しましたので、ご関心のある方はご覧頂ければと思います。

コーポレートガバナンス とは? ー 社外取が本当に過半数も必要か?

今週も暑い日がつづきますね。最近、お笑い芸人のヒロシのぼっちキャンプを時々見ています。私は出身が地方の田舎町ですが、最近、自然の中でキャンプをすることに強い憧れを感じおり、今年は家族を置いて1人でキャンプをしてみようかなと思案中です。

さて、本題ですが、前回の続きになりますが、最近、社外取が過半数の企業が徐々に増えており、コーポレートガバナンス・コードでもプライム上場企業には、社外取過半数を推奨していますが、それって本当にいいのかな?と思ったりします。

Noteに記事を掲載しましたので、ご関心のある方は是非ご覧頂ければと思います。

コーポレートガバナンスとは? ー 社外取の質が大事になります

多くの日本の上場企業ではこの数年で3分の1以上の社外取の条件はクリアするようになってきましたが、人数の基準をクリアしていれば問題はないのでしょうか? ということで前回、記事を書きました。

今回はこの続きで、社外取は数だけでなく、質が大事なのですが、Noteに記事を書いておりますので、是非こちらをご覧頂ければ幸いです。

 

コーポレートガバナンスとは? ー 社外取の活用について

コーポレートガバナンス・コードでは、「企業の稼ぐ力を高める」には社長をトップとしたピラミッドの枠外にある社外取締役を活用しようとしており、その社外取締役の機能をより発揮するためにはどういうことをコーポレートガバナンス・コードは求めているのでしょうか?ということで終わりましたので(前回の記事は最後に再掲します)、今回はこの続きになります。

この社外取の活用を実効あらしめるためには、どういうことをコーポレートガバナンス・コードは想定しているでしょうか、ということについて説明してみたいと思います。


ある会社(例えば株式時価総額5000億円程度のメーカーとしましょう)で取締役が総数で15名いるとします。このうち、社外取は何名いればよいでしょうか?2名いれば足りるでしょうか?3名いれば足りるでしょうか?というように、社外取が何名いるかが肝になります。

例えば、3名の社外取がいて、この3名が超一流企業の経営経験者とします。例えば、三菱商事三井物産三菱重工日立製作所といったような一流企業の元社長であったと仮定します。そして、残り12名は社内取です。学歴、職歴、世間的な地位からして社外取の方が「格」は圧倒的に上だと思います。この場合、この3名の社外取集団で12名の社内取締役(以後、社内取といいます)集団に議論で勝てるか否かが社外取の員数が適切かどうかの判断基準になります。

3名で勝てるでしょうか?多分勝てませんよね。ここで言っているのは、多数決で勝てるか否かではありません。多数決で勝てないのは当然ですが、要するにこの3名が委縮することなく、12名の社内取集団に自分の意見や主張を伝えることができるか否かです。いくら優秀な3名の社外取集団であっても、おそらく12名を前にしてはガンガンと主張や提案をするのは難しいはずです。

では何名が妥当なのでしょうか? コーポレートガバナンス・コードでは、最低3分の1の社外取が必要と考えています。つまり、15名の取締役を総数とした場合、最低5名の社外取が必要ということです。

分かりやすくいいますと、ガチンコの勝負になった場合、多数決の勝負では負けるけど、その前段階の意見・提案の議論の段階では、5名の社外取集団がいれば、残り10名の社内取集団と戦えるであろうということです。

5名が合理性のある意見や主張をすれば、それになびく社内取が出てくるかもしれません。ということで、まずは、社外取は3分の1以上が存在することが必要になってきます。多くの日本の上場企業ではこの数年で3分の1以上の社外取の条件はクリアするようになってきました。では、人数の基準をクリアしていれば問題はないのでしょうか? 

この続きは次回です。

Noteをはじめました!

本日は夏季休暇最終日です。結局、夏季休暇中は、仕事は全くせず、情報収集とSNS発信をしていたので、明日は、朝6時30分に出社して(私の場合、通勤が30分ジャスト)、朝からオフィスで気合を入れてお仕事をする予定です。

さて、これまではてなブログツイッターを情報発信として活用してきましたが、先日、Noteの活用も開始しました。

基本的にはブログで書いている内容と大きくは異ならないのですが、Noteの場合には記事の有料販売もできるということですので、近い将来に副業を本格的に開始して、収益を得るということを考えた場合、Noteが便利かなと思い、ひとまずNoteに慣れるためはじめた次第です。

はてなブログとNoteでの記事の書き分けをどうすべきかなと考えるべき事項がありますが、当面は同じような記事を掲載して、Noteの記事はツイッターでも同時に掲載することをしたいと考えております。

コーポレートガバナンスとは? ー 企業の稼ぐ力を高める手段は?

今週は月曜日から夏季休暇で、本日、旅行先から東京に戻りました。長野県の蓼科に3泊4日の旅行で、北八ヶ岳などを車で訪れましたが、涼しくて楽しい夏休みでした。

東京に戻り、東京の住民の住宅事情を蓼科の家々とあらためて比較すると東京の庶民(勿論、私も庶民ですが)の貧しいながらも見栄をはった生活(例:世帯年収がわずか1000万円前後(子供2人がいてこの程度の年収だと都内での生活はカツカツのはずだと思います)で、3階建ての建売住宅や狭いマンションに住みながら、車だけは見栄をはって中古のベンツかBMW等の外車(街中や駐車場で小さな優越感に浸りたいのでしょう)にわびしさを感じるところです。

さて、本題ですが、前回、コーポレートガバナンス・コードの目的は、上場企業の「稼ぐ力を高めること=攻めのガバナンス」であることを前回お話をしました(最後に再掲しています)。では、稼ぐ力をどのようにして達成することを想定しているのでしょうか?
企業の業務執行を決定するのは取締役会であり、日本企業は昔から大人数の取締役がいます。売上高が2,000億円程度の規模しかないメーカーでも取締役が30名近くいるなんてケースが多かったですけど、人数は多いけど、残念ながらこれがあまり機能していなかったのです。

取締役は、部長などの一般社員とは立場が異なり、会社との間に委任契約関係に立ち、善良なる管理者の注意義務を負い、企業ひいては株主の利益を優先する立場にあります(会社法で昔から規定されています)。けど、実務では、そういう意識もないし、そういう行動をしてこなったのです。どうしてでしょうか?

まず、取締役のほとんどは社内で昇格したプロパー社員です。つまり、新人として会社に入り、年齢とともに係長、課長、部長と昇格して、運良く役員になれたサラリーマンに過ぎず、取締役になったと同時に意識が変わることなど現実には期待はできません。取締役になっても、自分を引き立ててくれた常務、専務、副社長、社長の序列に下にいるのであり、上席役員の顔色を窺いながら仕事をすることは、一般社員と何ら変わることなく、自分の大胆な意見を口にすることはできません。

もし、大胆な意見をずけずけ言ってしまい、社長に「こいつ面倒なやつだな。邪魔だな。」と思われてしまったら最後、任期満了時に株主総会で会社提案議案で次期取締役候補から外れてしまい、子会社の役員あたりに飛ばされ、給料が激減してしまいます。

要するに整理すると、社内取締役なんてのは、会社法上の取締役などと言っても本人はそんな意識はあまりなく、上司の顔色を見て仕事をする一般サラリーマンと実のところ同じです。勿論、権限は部長よりも広いですが、本質においては、係長・課長・部長あたりと何ら変わることはないのです。私も長年、民間企業でサラリーマンをやっていますが、つくづくそう感じます。

取締役就任時に取締役の心得のような勉強会は社内の法務部門や外部講師がやるケースが多いですが、まあ、こんなことやってもまず意味はないですよね。私も過去に前職時代に社内研修で講師をやりましたが、だいたいにおいて、皆さんきょとんとした顔をしており、ほぼ理解ゼロの様子です。

そこで、社内取締役には稼ぐ力を高める戦略、つまりこれまでの延長線を打破する、大胆な事業戦略を策定したり、実行することは期待できないということになり、そこで登場するのが社外取締役です。つまり、社内のしがらみにとらわれることなく、取締役会において経営トップの顔色を気にすることなく発言・行動することを期待されています。つまり「面倒なやつ」としての機能が期待されているわけです。

コーポレートガバナンス・コードでは、「企業の稼ぐ力を高めるには、社外取締役の存分に活用しよう」と金融庁経済産業省はじめ政府は考えたわけです。社内取締役はあまりにサラリーマン過ぎるから、社長をトップとしたピラミッドの枠外にある社外取締役を活用しようということです。

では、次に社外取締役の機能をより発揮するためにはどういうことをコーポレートガバナンス・コードは求めているのでしょうか?続きは次回です。

keieikikaku.hatenablog.com

金融審議会「公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ」 ー 第2回が開催されました

本日は夏休み初日です。投資先銘柄の周辺情報整理とメモ作成の後、近くのプールで1時間泳ぎました。私の場合、重点的に投資している厳選銘柄は数銘柄あり、四半期決算のタイミングで周辺情報の整理とIR部門への質問をしているのですが、1Q決算のタイミングは自分の勤務先の決算業務で多忙で時間がとれなかったので、この夏休みに作業をしています。

さて、前回の第1回会議から少し日がたちましたが、第2回会議が7月31日に開催されました。事務局資料は次のとおりです。

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tob_wg/shiryou/20230731/01.pdf

今回は公開買付規制(TOBルール)の見直しの可能性が論点として議論されたようです。次の点などが討議事項とされています。

  • 市場内取引により議決権の3分の1超を取得する取引を強制公開買付規制の適用対象とすることについて、どう考えるか
  •  第三者割当により議決権の3分の1超を取得する取引を強制公開買付規制の適用対象とすることについて、どう考えるか
  • 公開買付けの強圧性の問題に対応するための措置を講じること及びその具体的な措置の内容について、どう考えるか
  • 3分の1ルールの閾値を引き下げること及びその具体的な閾値について、どう考えるか

特に市場内取引などが企業の実務者は関心が高いのではないでしょうか?というのも、MOM要件での買収防衛策の総会決議が裁判で争われたのも、投資ファンドによる市場内取引での短期間での買い増しのケースでした。

私は過去10年以上、買収防衛策の継続更新の実務を証券会社と事業会社で担当したきたので、TOBルールの動向はだいぶ前から注視してきました。TOBルールが不十分であるが故に事前警告型の買収防衛策を導入し、有事の際に株主に十分な情報と判断のための時間を提供するという流れです。機関投資家と対話をするとTOBルールを理解していない投資家もかなり多く(表面的なことは投資家も理解してはいるのですが・・)、説明に苦労することもありました。

今回の第2回会議の議事録の公表はもう少し先になりますので、公表され次第、読んでみたいと思います。

コーポレートガバナンスとは?ー目指すところは何でしょうか

上場企業で働く方であればコーポレートガバナンスという言葉は社内でも耳にするかと思います。けど、コーポレートガバナンスの意味、というか趣旨は、ほとんどの方が理解していなのでは?と思います。社内の財務部門やIR部門の方なども本質的なところは分かっていないのが私の実務感覚です。そこで、個人株主の方にも分かりやすく説明をしてみたいと思います。
まずコーポレートガバナンスといえば日本では2015年に東証コーポレートガバナンス・コード(ガバナンスコード)を制定しました。東証が制定はしたのですが、実質は金融庁が策定したといってよいかと思います。このコーポレートガバナンス・コードは2018年、2021年に改訂がされております(ちなみに私は2015年の制定時から事業会社にて、コーポレートガバナンス・コード対応や多くの機関投資家との対話の実務を担当しています)。
では、このコーポレートガバナンス・コードは、どういう目的で策定され、その目的をどうやって達成しようとしているのでしょうか?
当時問題であったのは、日本企業の収益性の低さです(今も海外企業と比較すると低いですが)。つまり、利益率が低い、結果、ROEが低い、このため株価が低い(低PBR)という状況にありました。営業利益率が低いというのが一番の元凶です。
日本企業は収益性が低い上に、少ない儲けも内部留保にまわし(バランスシートの繰越利益剰余金が増えるということです)、株主への還元も消極的でした。結果、金持ちの海外の機関投資家にしてみると「株主を大事にしない日本企業など投資しても無駄だからやめよう」という状況にあったのです。でも、東京を世界の金融市場の拠点にしたいと思っていた政府としては、海外の機関投資家ブラックロックなどが有名ですよね)が日本に投資をしてくれない困ってしまいます。そこで、コーポレートガバナンス・コードを策定して、日本の上場企業の意識を変えて、「稼ぐ力」を向上させようとなったっわけです。企業に沢山、お金儲けをして欲しいということですね。
海外ではコーポレートガバナンスというと、どちらかというと、経営トップの暴走を止めるという意味強いのですが(コンプライアンス的な意味ですね)、日本の場合は、稼ぐ力を高めるという視点であり、これが「攻めのガバナンス」とも言われています。纏めますと、コーポレートガバナンスの土台となるのは、コーポレートガバナンス・コードであり、このコードは日本の上場企業の稼ぐ力を向上させることを目的としているということです。ここまではご理解頂けたでしょうか?
では、その稼ぐ力をどういう手段で高めるのかということをコーポレートガバナンス・コードは考えているのでしょうか?これは次回説明をしたいと思います。

個人株主のプロフェッショナル視点向上のためのコーポレートガバナンス勉強会① ー 取締役選任議案に賛成する際の業績水準

最近の新聞報道などを見るとプライム上場企業で女性役員30%云々が言われているようです。けど、正直なところ女性役員が30%いてもBtoB企業の業績には全く影響ないと思います。「業績向上に関連有」とする話も稀に聞きますが、企業で実務をしている私の感覚ではまず関連性はないですね。プロパーの女性役員を無理やり、極めて少数の女性社員母集団から選定しても、能力の乏しい人材を無理やり役員にするだけであり(能力が乏しくても重要性の乏しい部門を任せているのであれば何ら害はないですが・・)、そんなことよりも、男女問わず「中途採用者の役員を30%以上」にした方が株価向上にはプラスです。プロパー社員である以上、男性だろうが女性だろうが差はないです。プロパーより中途採用者が大事です。ちなみに、私は投資先企業の役員の女性比率など関心ゼロです。逆にそこを強調する企業は「大丈夫?」と不安になります。

さて、前置きはこのくらいにして、本日は第1回ということで、取締役選任議を判断す際のプロである機関投資家の視点を紹介したいと思います。

個人株主の方はどういう基準で投資先企業の取締役に賛否行使をすればよいでしょうか?ほとんどの個人株主の方は、何も考えずに賛成するか、気まぐれで反対したりすることと思います。「そもそも取締役の選任などに何ら関心ないよ」という方が大多数かと思います。

けど、その企業の業績向上、つまり株価向上に貢献するのは役員のパフォーマンスによるところが大きいのであって、個人株主もしっかりとした判断基準に基づき取締役選任をするべきと私は思います。

ここで個人株主が判断の拠り所にすべきは機関投資家の議決権行使基準です。機関投資家は、投資先企業の株式を1銘柄あたり数百万株以上を保有することもあり、また、アセットオーナーから資金を預かり運用を任されていることから、投資先企業の取締役の能力に高い関心を有しており、議決権行使も真剣に実施しています。その際の基準を個人株主も参考にする、というかその基準に従い賛否判断をするのがベストです。

では、「その基準って何?」ということですが、結論からいうと、ROEの5%未満が過去3年程度続くようであれば、その企業の経営トップや在任期間3年以上の取締役には反対すべきです。機関投資家もおおむねこの考えで賛否を判断しています。いくつかの機関投資家の基準を列挙すると次のとおりです。

  • 直近3期連続ROE5%未満+業界(東証33業種)の33%ile未満。但し、モニタリング・ボード+経営改善努力(直近期の純利益が前期比増 OR 3期前比増)が認められる場合を除く3
  • 3期連続で東証一部上場企業ROEの下位1/3分位未満(除く:過去3期ROEの平均値が5%以上の場合)
  • 期連続でROEがTOPIX構成銘柄全体の上位75%タイル水準以上を満たさない
  • 過去3期連続でROEが5%を下回る+今後改善が見込めず、経営責任ありと判断する場合。判断にあたっては業種状況等も勘案
  • ROEが過去3期連続して5%未満
  • 年連続ROEが5%未満+業種別でROEが3年連続下位25%以下

ROEは株主資本コストを上回る必要があり、通常、株主資本コストは7~8%と言われていますので、ROE5%では問題では?という考えを持たれる方もいるかもしれません。これは全くその通りです。けど、現状、機関投資家も役員の選任議案ではROE8%までは要求していません。その理由は、日本企業全体としてみるとROE8%未満は多く、8%を基準にすると役員選任議案が可決されないことになるからです。

なお、個人株主の方で「私はROE8%でないと許さん」という意見もお持ちの方もいるかもしれませんが、それは間違ってはいないので、ROE8%未満の経営トップに反対しても良いとは思います機関投資家も将来的には、ROE8%未満が数年継続する場合には反対という数値基準を引き上げる方向には向かうと思います(ただし、昨年、多くの機関投資家と会話をした限りでは、ROE8%まで引き合げるのはもう少し先かなという感覚を個人的には持っています)。

ニデックとTAKISAWAの攻防を分かりやすく解説⑤ ー ニデックはもう回答したようですね

TAKISAWAが買収防衛策のスキームに従い必要情報リストの提供をニデックに求めていたことを前回紹介いたしましたが、ニデックは、この要請に対して回答したことについてプレスリリースを次のとおり公表しました。

https://www.release.tdnet.info/inbs/140120230801531782.pdf

必要情報リストの具体的内容が不明ですので、どの程度の時間を要する回答か分からないのですが、これだけの短期間でニデックが回答したことに鑑みると必要情報リストの内容が少ないのか、またはニデックの回答がシンプルであるかのいずれかの気がしますが、詳細開示されていない以上は何とも言えません。

これを受け、TAKISAWAは次にどういう段階に進むかというと、買収防衛策によれば、「大規模買付者から意向表明書の提出があった事実及び当社取締役会に提供された大規模買付情報は、株主の皆様のご判断に必要であると認められるときには、当社取締役会が適切と判断する時点で、その全部または一部を開示いたします」とあります。株主の判断に必要ないと判断する場合には、開示しません。

開示するか否かはわかりませんが、いずれにせよ、その後に取締役会は買収に対する評価をします。TAKISAWAの買収防衛策に次の記載があります。

次に、当社取締役会は、大規模買付情報が完備した後、当社取締役会による検討、評価、交渉、見解形成、代替案立案のための期間(以下「取締役会評価期間」といいます。)が当社取締役会に与えられるべきであると考えます。この取締役会評価期間は、大規模買付行為の評価等の難易度に応じて、対価を現金(円貨)のみとする公開買付けによる当社全株式の買付の場合には 60日間、その他の大規模買付行為の場合には 990日間とします。大規模買付行為は、この取締役会評価期間が経過した後、開始され得るものとします。 当社取締役会は、取締役会評価期間中、外部専門家等の助言を受けながら、提供された大規模買付情報を十分に検討・評価し、当社取締役会としての見解を慎重にとりまとめて公表いたします。また、必要に応じ、大規模買付者との間で大規模買付行為に関する条件変更について交渉し、株主の皆様に取締役会としての代替案の提案を行うこともあります

買収防衛策の1つの肝はこの取締役会評価期間です。金商法上のTOBルールでは、会社は意見表明するに十分な期間がないところ、買収防衛策では、取締役会評価期間を設けて十分な検討と買収者との交渉ができるのです。ニデックは23年9月中旬を目途にTOBを開始することを予定していますが、これは、当然ながらTAKISAWAの買収防衛策の取締役会評価期間の後に開始することを想定しているということです。