中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

三菱重工業が事業選択の財務指標を設定-事業ポートフォリオの選択はなぜ必要か?

12月11日の日本経済新聞三菱重工業が事業継続の判断基準とする財務指標に総資産回転率とROAを使用するという記事がありました。総資産回転率が1倍以上であること、ROA6%以上であることが基準ということです。

ROAは、総資産利益率で次の内容に通常分解されます。 

ROA売上高当期純利益率(純利益÷売上高)×総資産回転率(売上高÷総資産)です。

当期純利益率が用いられることが最近多いですが、営業利益や事業利益(この定義は各社各様)を用いるケースも多いです。この指標の意味するところは、小さい資産で売上高をあげて、そして、利益率を高めなさいということです。総資産回転率を1(100の総資産を用いて100の売上をあげる)とすると、当期純利益率が最低6%必要ということになります。三菱重工業では、20ある事業についてこの基準に従い判断するようです。

事業別の投資資本収益基準としては、ROICを使う企業も多いかと思います。

ROIC=該当事業の営業利益÷該当事業への投下資本(現金+有形固定資産+運転資金)

ところで、事業ポートフォリオの在り方が議論される理由はどこにあるのでしょうか?それは経営資源の配分です。つまり、ある企業が、A事業、B事業、C事業の3つの事業を抱えており、A・B事業の営業利益率が10%であるが、C事業の営業利益率が2%とします。

C事業を継続するには、人・物・金といった経営資源を一定程度投入しなければなりません。そして、同じくA・B事業にも経営資源を投入するのです。C事業がなければ、C事業に投下していた経営資源をA・B事業に投下して、利益率の高い事業をより強化できるため、C事業は切り出せということです。これが根底にある考え方です。

しかし、問題は事業は継続するので、将来においてC事業が花形になる可能性もあるということです。2~3年の予想はできますがこれが5年、10年となると誰も予想はできません。ここが難しいところかと思います。