中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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オーナー企業は一般企業(サラリーマン社長の会社)より収益性などが高い

4月14日号の週刊ダイヤモンドに「外国人投資家が熱視線 オーナー社長」とのタイトルの記事がありました。

さらっと読んだところ、海外機関投資家日本株投資では、オーナー社長を高く評価しているということです。

オーナー社長の反対語がサラリーマン社長ですが、記事では、日本経済大学大学院の後藤俊夫氏(聞いたことのない大学ですが、後藤氏は、東京大学ハーバード大学卒のようです)という大学教授の調べた結果として、上場企業の約6割がオーナー企業であり、比率でいうと、同族経営53%、単独経営10%、一般企業37%ということになっています。単独経営とは、創業社長以外に経営に関与しているファミリーがいない企業をいい、そして、一般企業の社長がサラリーマン社長ということです。

オーナー社長とサラリーマン社長の違いは、記事にも書かれていますし、誰でも常識的に知っていることですが、事業戦略、事業撤退といった大胆な戦略を策定・実施できるか否かが両者の大きな違いになります。

サラリーマン社長はどうしても任期があるので、OBなどに配慮して大胆な戦略を打ち出すことが出来ないが、オーナー社長は自分の思い通りの行動がとれるということです。本や雑誌に書かれていることで、特に目新しいことではないかと思います。

それよりも、この記事を見て少し驚いたのは、オーナー企業の方が、ROAROE流動比率といった点で一般企業を上回るというデータがあるという点です。

ROAとは総資産事業利益率であり、バランスシートの資産をいかに効率良く活用して利益を上げているかの指標になります。この数値が高いほど良いと言われています。

この明確な理由は、たしか記事には書いてありませんでしたが、オーナー企業の方が、不採算事業をカーブアウトするなどして、資産効率の改善を図ることが比較的容易にできる一方、サラリーマン社長である一般企業は、カーブアウトといった大胆な施策が打てないため、ROAも低いままにあるといったことが理由でしょうか。

コーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議では、不採算事業のことをゾンビ事業と指摘されている委員もいましたが、このゾンビ事業をなかなか切り離せないのが、一般企業であるということになるのかも知れません。

しかし、今は事業撤退といった事業ポートフォリオの見直しについて経産省金融庁
など政府が促進する動きにあります。であれば、一般企業であっても、この政府の後押しもあり、オーナー企業と同じように大胆な事業撤退、事業ポートフォリオの組み替えなどが今後は進んでいくのかも知れません。