中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

ニデックとTAKISAWAの攻防を分かりやすく解説④ ー TAKISAWAが必要情報リストをニデックに交付

TAKISAWAが次のとおりプレスリリースを公表しました。

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS03883/f596652d/7489/4b48/a1d0/0d36b36dd1a7/140120230728529482.pdf

TAKISAWAの買収防衛策は概ね、次のような骨子になります。

  1. 大規模買付者は、大規模買付行為を行う前に、取締役会に対し必要かつ十分な情報を提供する
  2.  取締役会が当該大規模買付行為に対して一定の評価を行い、また代替案を提示するために必要な期間(取締役会評価期間)が経過した後に、大規模買付行為を開始することができる
  3.  取締役会は、当該大規模買付行為を検討・評価し、取締役会としての見解を公表する
  4. 当該大規模買付行為に対する対抗措置の発動に関する取締役会の判断について、その判断の客観性、合理性及び公正性を担保するため、当社取締役会から独立した組織である独立委員会を設置する
  5. 独立委員会は、対抗措置の発動の是非について独立委員会としての判断を下し、当社取締役会に勧告を行う
  6. 取締役会は、対抗措置の発動の是非に関しては、独立委員会の勧告を最大限尊
    重したうえで、最終的な決定を行う

今回TAKISAWAがプレスリリースで公表しているように必要情報をニデックに交付したのは、上記の1に基づくものです。必要情報リストの詳細はプレスリリースには明確には記載されていませんが、買収防衛策には次のような事項が該当すると規定されています。例示列挙のためこれら以外も含まれます。

① 大規模買付者及びその特定株主グループ(共同保有者、特別関係者、ファンドの場合は組合員等の構成員を含む)の詳細(名称、資本構成、経歴・沿革、事業内容、財務内容等を含む)

② 大規模買付行為の目的、方法及び内容(買付対価の種類・価額、買付の時期、買付に関連する一連の取引のスキーム、買付行為の適法性、買付実行の蓋然性等を含む)

③ 買付価格の算定の基礎(算定の前提条件、算定根拠、算定に用いた数値情報、買付に関連する一連の取引により発生が予想されるシナジーの額及びその算定方法等を含む)及びその経緯

④ 買付資金の裏付け(買付資金の提供者の名称、調達方法、調達に関連する一連の取引の内容等を含む)

⑤ 買付目的が支配権取得または経営参加の場合、支配権取得または経営参加の具体的な方法、大規模買付行為完了後に企図する当社及び当社グループの経営方針、事業計画、財務計画、資本政策、配当政策、資産活用策等

⑥ 買付目的が支配権取得または経営参加の場合、大規模買付行為完了後に企図する当社及び当社グループの従業員、取引先、顧客、地域社会その他当社のステークホルダーの処遇方針

⑦ 買付目的が純投資または政策投資を目的とする場合、株券等を取得した後の当該株券等の保有方針、売買方針及び議決権行使方針ならびにその理由

⑧ 大規模買付行為に際しての第三者との間の意思連絡の有無、その内容

世のほとんどの買収防衛策スキームでは、このように必要情報を最初に大量買付者に求めるのが常です。買収防衛策は買収を阻止するための方策ではなく、株主がTOBを判断するに十分な時間と情報を確保するための方策ですので、その前提として大量買付行為者にまずは、買収の狙いなどの詳細情報を提供を求めるということです。

TAKISAWAはニデックが今後提供するであろうこれらの情報の内容を精査して、その後、その一部または全部を公表する流れになるのだろうと想像します。