中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

サンセイ(6307)と光通信の攻防(4)ーサンセイが取締役会評価期間一部訂正

サンセイが取締役会評価期間の開始をすることを公表していましたが、11月26日に評価期間の一部訂正を公表しました。評価期間60日としていたところを誤りがあり、90日に訂正したということで、プレスリリースからの該当箇所を一部抜粋すると次のとおりです。

(訂正後)
(前略)なお、光通信グループより、「対価を現金(円貨)のみとする当社全株式等を対象とする公開買付け」を行わない旨の回答を得ていることから、評価期間は本日から起算して最大 90 日間(2021 年2月23 日まで)となります。ただし、評価期間は取締役会の評価・検討のために不十分であると取締役会及び独立委員会が合理的に認める場合に限り延長できるものとし、その場合は、具体的延長期間及び当該延長期間が必要とされる理由を光通信グループに通知するとともに株主及び投資家の皆様に開示いたします。また、延長の期間は最大 30日間といたします。

サンセイの買収防衛策スキームでは、①対価を現金(円貨)のみとするサンセイ株全株を対象とする公開買付の場合には60日間の評価期間、②その他の大規模公開買付等の場合には90日間となっています。これは日本円で発行済株式の全株式のTOBを行う場合と比べて、円貨以外での株式取得の場合や円貨ではあるものの一部株式のTOBの場合には、取締役会は検討に時間を要するため期間を30日ほど長くするという趣旨で買収防衛策の一般的なスキームです。

今回のサンセイのプレスでは、「対価を現金(円貨)のみとする当社全株式等を対象とする公開買付けを行わない」とあります。これは光通信はサンセイ株の取得をやめた訳ではなく、(ア)公開買付’(TOB)は行う可能性があるが「全株式」の取得は行わない、または(イ)TOB以外の手法’によりサンセイ株式を取得するということです。従い評価期間は90日に延長したということになります。

こうして見ると、全株式を対象としたTOBを行わないケースも実務上は多いと思いますが、その場合には90日間も取締役会は検討できるわけですから、見方によっては買収防衛策は買収提案の引き延ばしを意図したスキームとも言えます。だから、機関投資家は反対しているのです。