3月記決算企業は今年の株主総会シーズンも終わりですね。新聞報道によれば今年は株主提案が非常に多かったようです。今年の総会を振り返ると、機関投資家が反対の議決権行使をしたという企業も多かったと思います。しかし、その一方、機関投資家の議決権行使基準に照らして、反対の議決権行使がされるべきところ、意外に賛成が得られたという企業もあると思います。その違いは何でしょうか?
そのためには、機関投資家の議決権行使プロセスを理解する必要があります。機関投資家の議決権行使担当は、投資先企業の総会議案について、議決権行使基準に抵触するか否かをまず判断します。例えば、過去3年平均のROEが5%未満の場合には反対という基準があるとして、その企業のROEが3%だとします。この場合、「抵触する」ということになります。
この場合、議決権行使担当者は次のステップとして、当該企業の担当セクターアナリストにこの企業の業績や見通しを聞きます。ここでアナリストが賛成を強く推奨するとその意見を尊重して議決権行使担当は賛成を投じることになります。つまり、ポイントは担当するアナリストの判断です。アナリストがこの企業はこれまで業績が低迷していたが、今期は業績が回復するとか、不採算事業の売却を決めたなど道筋を示した場合には、賛成という判断をすることもあります。
では、企業としては普段から何をしておけばよいかというと、それはやはり開示と機関投資家との対話ですね。アナリストが投資先企業に賛成できる心証を形成するに足る材料が肝になります。
株主総会の事務方は総会が終わり、ほっとしていると思います。けど、物言う株主は来年の総会に向けて仕込みを開始しています。総会が終わった企業は、総会の各議案に対する機関投資家の賛否実績を分析して、何故賛成であったのか、反対であったのかの分析をすることが大事です。7月、8月に分析をしっかりと実施し、必要に応じて9月に議決権行使結果に特化して機関投資家と対話をすることが必要になります。