中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

「企業価値」を理解した上での投資家との対話 ー 一般事業会社は「企業価値」の意味の理解から始めることが必要

先日、ツイッターで記事を紹介しましたが、日経新聞に次の記事が掲載されていした。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR02DKJ0S3A600C2000000/

この記事を読んで、その通りと私は思いました。企業価値の定義について、社内の関係者と話しをしても驚くほど理解していない人が多いなと感じています。

総合商社、金融以外の多くの一般事業会社では、恐らく、経営トップやマネジメント層でも明確な認識をしていない方が非常に多いのだと思います。メーカーなどはじめ一般の事業会社の方は、総合商社や金融の方にとっては、「え、こんな初歩的なこと知らないの?」とびっくりするほどファイナスや資本市場のことを理解していない方が多いです。知っているふりだけをする人も多いのですが(株式資本市場とは直接のかかわりのない方々の集まる業界なので仕方ないところでありますが。40代になっても「機関投資家って何?」という人が非常に多いということを良く聞きます。)。企業価値というと、「企業のレピュテーションを含む会社のもつ価値です」という極めてあいまいな回答は非常に多いです。

でも、これでは、「企業価値を高めるのが企業の役割です」と宣言したところで、肝心のところが機関投資家とすり合っていないことになります。

経産省の買収の在り方の行動指針案に、企業価値について明確に記載されています。企業価値とは、会社の財産、収益力、安定性、効率性、成長力等株主の利益に資する会社の属性又はその程度をいい、概念的には、企業が将来にわたって生み出すキャッシュフローの割引現在価値の総和である」ということです。肝は「企業が将来にわたって生み出すキャッシュフローの割引現在価値の総和」です。フリーキャッシュフローですね。では、フリーキャッシュフローとはどうやって計算するのでしょうか?

ざっくりというと、税引き後の営業利益+減価償却費ー運転資本の増加額ー設備投資額です。今後の3〜5年の事業計画に基づく割引後の数値を出し、これに5年目以降のターミナルバリューを足します。このフリーキャッシュフローを高めるのが企業価値を高めることです。

細かく正確に書くと色々とあるのですが、要は、➀営業利益を高める ②税金を減らす ③売掛金の回収期間を短くする等の施策が企業価値向上の肝になります。企業価値を高めるとはそういうことです。ここを明確に理解することが機関投資家と対話をする上でとても大事です。そうしないと、目線のあっていない対話になります。とりあえず、会話をするが「対話になっていない」という良く分からない状況になるのです。

ESGもそうです。ESG向上=企業価値向上と錯覚している企業の担当者も実に多いです。けど、これも根本を理解していないと意味不明になります。環境対応や人的資本の投資を通じて、営業利益を増やすのが企業価値向上なのです。これが分からないと、サステナビリティー部門に多い、ESGオジサン・オバサンといった人種が社内に増え、企業の開示物を見ても、「当社は社内の教育に力を入れます」「イキイキとする社員の活気のある職場を作ります」という意味不明の状況になってしまうのです。

人的資本をいかにして営業利益の向上に繋げるのかを会社の方針として明確にすることが肝になります。どういう教育を社員のどの層に施し、いかにして営業利益を上げていくのかまで明確に示すことが必要なのです。良く理解できていない企業は、いまいちど企業価値とは何か、ESGがどうして企業価値の向上に資するのかを経営トップ以下マネジメント層でしっかりと勉強することがとても大事かなと思います。