中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

コスモエネルギーホールディングスが買収防衛策を可決 ー 株主総会のMOM決議が許容されるのは?

明日は週刊ダイヤモンドの発売日ですが、「激安株」についての特集のようですね。アクティビストに狙われる可能性のある銘柄が掲載されているだと思います。四季報オンラインでPBR1倍未満等の一定条件でスクリーニングをしても良いのですが、週刊ダイヤモンドで掲載された銘柄を見て、四季報オンラインで1つずつ確認、投資先を選定したいなと思います。総会シーズンも終わり、来年の総会に向けてアクティビストが今後仕込み始める時期になりますので、私も、明日からは平日のランチタイムは四季報オンラインとにらめっこしての銘柄選定の日々になります。

さて、本題ですが、昨日の日経新聞にも記載されていますが、コスモエネルギーホールディングスが買収防衛策を可決したようです。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO72187610U3A620C2TB0000/

本件で論点となっているのは、旧村上ファンドが約20%保有している議決権が除外されて総会決議がなされた点です。MOM決議です。MOM決議とは、前にもブログで何度か書いたことがありますが、マジョリティ・オブ・マイノリティのことを言います。前には東京機械製作所アジア開発キャピタルの攻防の際にも、MOM決議での買収防衛策が可決され、この場合は法的にも有効と裁判所が判断をしました。

経産省が策定中の「企業買収における行動指針(案)」でもMOM決議について次の記述があります。

これまでの司法判断の中には、対抗措置の発動についての株主総会での決議において、買収者、対象会社取締役及びこれらの関係者の議決権を除外した議決権の過半数による決議が許容された事例が存在する。このような決議に基づく対抗措置の発動が安易に許容されれば、望ましい買収をも阻害する事態を招きかねない。また、決議要件を設定するのは対象会社であることからすれば、対象会社として承認が得やすいと考える決議要件が恣意的に設定されるおそれが存在する。したがって、このような決議に基づく対抗措置の発動が濫用されてはならず、これが許容されうるのは、買収の態様等(買収手法の強圧性、適法性、株主意思確認の時間的余裕など)についての事案の特殊事情も踏まえて、非常に例外的かつ限定的な場合に限られることに留意しなければならない。

コスモと旧村上ファンドの攻防の細かいやりとりまではまだ見れていませんので、本件について正確な判断は出来ませんが、経産省はMOM決議は極めて限定的であるべしと考えており、一般論として、MOM決議は株主平等原則に照らして如何なものかなとは思います。

だって、会社法上、株主の権利として共益権があり、議決権については1株1議決権の原則が大前提としてあります。ある銘柄の株式の10%を取得して、会社法上の権利行使をしようとすると制限されてしまうのですが、これって普通に考えておかしいですよね。特定の株主のみによって多くのステークホルダーに影響する企業価値が損なわれることはあってはならないということは分かります。けど、今の会社法上は、やはり株主の権利が明確に定めらている以上、その例外的扱いをするのは極めて例外的な場合にあるべきです。でないと、海外の投資家から大きな批判が出て、日本への投資を考え直すのではないでしょうか?

経産省が行動指針のパブコメをしていますが、おそらく国内外の機関投資家からMOM決議のより厳格化を求める意見が出ると思います。MOM決議が無制限に許容されると、企業価値を高める買収を委縮させることにもなりかねません。コスモのケースはこの例外的な事例に該当する事由があると考えてMOM決議を選択したのかも知れませんが・・・。個人的には、旧村上ファンドには、この決議の有効性を巡る訴訟を提起して欲しいところです。本件は興味深い案件ですので、ブログでも連載していきたいと思います。