中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

事業会社の方もスチュワードシップ・コードに一度目を通すとよいと思います

本日も1時間のウォーキングをしましたが、近くでドラマの撮影をしており、大勢のスタッフの方が道路で誘導や準備をしていました。休日にあんなに多くの人が参加しており(制作会社の方でしょうか)、ドラマの制作というものは人件費も結構かかるんだろうなと思ったりしました。ウォーキングは、ジョギングでは見落としてしまうことに気付き、考えるという点でも良い習慣だなと思いました。

さて、本題ですが、事業会社の方はコーポレートガバナンス・コードには詳しいかと思いますが、スチュワードシップ・コード(以下「SSコード」といいます)はご存じでしょうか? 名前を聞いたことはあるが、内容は読んだことがないという方が大多数かと思います。

SSコードは機関投資家が顧客・受益者と投資先企業の双方を視野に入れ、責任ある投資家として、スチュワードシップ責任を果たすにあたり、有用と考えられる原則を定めたものです。ここで大事なキーワードは「スチュワードシップ責任」です。

スチュワードシップ責任とは、機関投資家が投資先企業やその事業環境等に関する深い理解のほか運用戦略に応じたサステナビリティ(ESG 要素を含む中長期的な持続可能性)の考慮に基づく建設的な目的を持った対話(=エンゲージメント)などを通じて、企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任のことを意味します。

平たくいうと、アセットオーナーから運用を委託されている機関投資家は、投資先企業と対話をして、企業の成長を促すようなアドバイスや提案を行い、最終的にアセットオーナーのリターンの最大化を目指せということです。SSコードは2014年に制定され、その後、複数回の改訂がなされています。SSコードでは次のとおり8つの原則が規定されています。

  1. 機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、これを公表すべきである。
  2.  機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たす上で管理すべき利益相反について、明確な方針を策定し、これを公表すべきである。 
  3.  機関投資家は、投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を適切に果たすため、当該企業の状況を的確に把握すべきである。
  4.  機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。
  5.  機関投資家は、議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つとともに、議決権行使の方針については、単に形式的な判断基準にとどまるのではなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫すべきである。
  6.  機関投資家は、議決権の行使も含め、スチュワードシップ責任をどのように果たしているのかについて、原則として、顧客・受益者に対して定期的に報告を行うべきである。 
  7.  機関投資家は、投資先企業の持続的成長に資するよう、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解のほか運用戦略に応じたサステナビリティの考慮に基づき、当該企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う判断を適切に行うための実力を備えるべきである。
  8.  機関投資家向けサービス提供者は、機関投資家がスチュワードシップ責任を果たすに当たり、適切にサービスを提供し、インベストメント・チェーン全体の機能向上に資するものとなるよう努めるべきである。 

事業会社の方にはSSコードは直接の関係はありません。このコードは、機関投資家に対する行動規範であるからです。けど、事業会社が機関投資家と対話をするに当たって機関投資家に課せられているこの規範について目を通した方がよいかと思います。

企業が投資家を選ぶ時代かと思います。SSコードを順守して企業の成長に汗を流している投資家には企業も応えるべきであるし、逆にそうでない機関投資家(=能力のない機関投資家の担当者)は企業にとって重要度の低い投資家と言えます。自社の機関投資家との対話を通じて、機関投資家の能力の見極めをする力が事業会社には今後求められます。